アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
贅の限界値 5
-
薄らいでいく記憶の中、
まだ、父も母も微笑みかけてくれていた頃。
それでも感じる違和感に、
硝子はあまり喋ったり笑ったりしない子どもだった。
熱を出しても言い出せずに学校へ行き、倒れてしまった時
母親は泣き叫びながら恥を知れと言った。
お前が倒れたりなんてするから
まるで私が、ダメな母親のようではないかと。
その時から硝子は
なんでも我慢しなければならないということを心に刻んで
それは貫き通さなければならない事も分かっていた。
こんな風になってしまうのは誰でもなく自分のせいなのだから。
すみません。
すみません、弱くて、グズで、役立たずで。
あなたを泣かせるつもりはなかったんです。
謝り続け、やがて真っ暗な夢から呼び戻されても
硝子の瞳からは涙が溢れていた。
重たい瞼に狭められた視界は、
絵の具を零したようにぼやけていて
硝子は暫くぼーっとその中を泳いでいた。
なんだか暖かくて、とてもいい香りがした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
95 / 229