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あれから一週間が経った。
優の言う通り、綾人を省こうとしていたやつの周りには誰もいなかった。
「綾人、可愛そうって思ってるでしょ?そういうこと思っちゃダメだよ。あいつが全部悪いんだ。」
「でも…」
「その優しすぎる性格が自分自身を苦しめてるっていい加減気づきなよ。ね?」
綾人は頷いた。
ゆっくりと誰にも言わなかった心の中の気持ちを初めて言葉した。
「俺さ、今まで優秀な人間にならないとってずっと思ってた。いつもいつもαの涼と比べられて、馬鹿にされてた。いくら成績がよくったっけ褒められることなんてなかった。でもね、思ったんだ。無理に優秀な人間にならなくていい。無理に自分を作らなくていい。たとえこの世に、α、β、Ωの存在があっても俺は俺。社会的地位の低いΩでも、この世に、同姓同名の小瀬 綾人という人間がいても、今ここにいる小瀬 綾人はたった一人なんだって。」
優に頭を撫でられて、綾人は目尻に涙を浮かべた。
「うん、前向き。」
「ありがとう。俺、優にたくさん支えられてたわ。」
いつもなら優が綾人の前を歩いているのだが、今日は綾人が優の前を歩いた。
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