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「まぁ、簡単に言えば裏切られたって感じかな。」
笑顔で言った。
少し間を開けてから口を再び開いた。
「昔、絶対この人も番になるって思ってた人がいたんだ。そいつは俺と同じバスケ部で、憧れの存在でもあった。でね、あぁ、この人絶対運命の人だって思った瞬間があったんだ。俺が中学を卒業したら番になろうって約束したんだけど、卒業式前日に…いなくなったんだ。そいつには番がいた。久々に会った時、隣には項を噛まれたΩがいたんだ。」
時折涙を流しそうになりながら話してくれた。
信頼していた分、裏切られた時のショックは大きかったはずだ。
辛いはずなのに無理して作った笑顔で言った。
「俺って馬鹿だよな。運命だって感じた時、それは憧れの勘違いだったんだ。」
「別に馬鹿じゃないと思います。馬鹿なのは相手なんじゃないんですか?」
「じゃあ俺と付き合って?」
「それは無理です。」
こんなことを言う余裕がまだあるんだ。きっと大丈夫だろう。
そう心のどこかで思った。
「でも、相談ぐらいならのります。そういう辛い思いした時とか、新しく好きな人ができたとかでも。」
「じゃあ遠慮なく相談させてもらうね。はいこれ、連絡先。」
いやいや受け取ったが、一様追加しておいた。
めんどくさい人だけど、いい人。辛い思いを乗り越えてきた人。そう思った。
でも、話を聞いて心のどこかで不安が生まれた。
番になる不安が。
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