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ライチュー
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あれから数週間経った。翔くんは未だに迎えに来てくれていない。ほんのちょっと、ちょっとだけ寂しい。誰にも相談出来なくて、息が詰まりそうだ。
せめて、俊が居てくれたらいいのに。周りは知らない大人で溢れてるし...。街は人通りが多くてうるさい。
早く帰りたいって願えば願うほど、その日は遠ざかっていくような気がしてくる。僕が何をしたって言うんだ。そう思っても答えはわからない。
「おーい、夏樹ご飯買ってきたぞ。てか、ちゃんと食べねえと骸骨になっちまうぞ」
「もう、なってもいいよ...僕生きる気力さえ失われつつあるんだもん。それに、なんでライチューがここにいんの?」
「俺はライチューじゃねぇ!奏さんに頼まれたから、仕方なくだ。奏さんお前のこと心配してたぞ。ほれ、開けてやるから食べろよ」
ライチューこと頼樹はこの間あったあの嫌な奴だ。奏さんの仕事場で会ったり、奏さんが家に呼んだりしてたから、仲良くなっちゃった。
大きな手で僕の頭を撫でて、箸とか器の用意をしてくれる。性格がよかったら絶対モテるのに。顔はいいし...寧ろ顔がいいからなのか。翔くんはそんな事ないもんな...
「折角、温めたんだから。さっさと食べやがれこのクソガキが。もしかして、食べさせて欲しいのか?プププ」
「自分で食べれるもん。ライチューってホントうるさいよね。母親かよみたいな時もあるし、実は僕のお母さん!?」
「なわけあるかぁ!ボケが!さっさと食えって言ってんだよ!スマホ踏んずけてやろうか!?」
「きゃーこわーい。そんな性格だから、モテないんだよっ!」
僕がそれを言った瞬間、ライチューは黙ってしたを向いたまま動かなくなった。これは、凹んでるか怒ってるかの二択だ。
バッと挙げられた顔を見れば、笑っていた。それは、どう言う意味かな。僕にはさっぱりわかんないな
ライチューが口を開けて何か言いそうになった瞬間ちょうど、玄関のインターホンがなった。
「はーい。どちら様で...翔くん...?」
僕の目の前に居たのは翔くんだった。もう、会えないかと思ってたのに。なんで今更来るの。来て欲しいって願ってたのに、いざとなるとこうなってしまった。
「迎えに来るの遅くなっちゃって、ホントにごめんね。夏樹にもっと早く会いたかったんだけど、居場所がわかんなくて」
「会いたかった...。僕、翔くんが他の人のとこ行っちゃったんじゃないかと思って、不安だった...翔くんに会えないのがこんなに辛いなんて思わなかった...」
よく頑張ったねって言って、翔くんは僕を抱きしめて、頭をずっと撫でてくれた。久しぶりに安心して、眠くなってきた。
「おやすみ夏樹」
目を瞑る前に聞いた声は、弱々しくて僕と同じこと思ってくれてるんじゃないかなって少し期待した。
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