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泣いた神崎くん
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あの日。
僕にキスをしたあの日。
神崎くんは謝りながら一瞬だけ顔を歪ませた。
眉間にしわを寄せ、ぎゅっと目をつぶり唇を固く結んでいた。
同じだ…。
あの時も、そんな顔をしていた。
胸が痛くなる。
何かを我慢するようなその顔。
「…っ…。」
未だ整わない呼吸に気を取られているのか神崎くんは肩で激しく息をしている。
僕は苦しそうな彼の背中を一生懸命摩った。
「大丈夫だよ。」
神崎くんはそう言って何度も僕を助けてくれた。
だから今度は僕が助ける番だ。
「大丈夫。僕はここにいるよ。」
片方の手を彼の手に重ねる。
ぎゅっと握ると神崎くんは上に逆の手を重ね握り返してきた。
いつもと違う、弱々しい力に胸が激しく脈打つ。
「…っはぁ……お、れ……。」
呼吸が整ったのかまだ苦しそうな神崎くんは口を開く。
「お前が……死んじゃうかと、、、っはぁ、、、おもっ、、、」
神崎くんは途切れ途切れになりながら続ける。
「ゆ、め…見て……神城が、し、、、死んじゃう…ゆ、め……俺、、、怖くて……。」
よく見ると腕には入院患者がつけるバーコードのようなものがついたリストバンドと点滴用の針が刺さっている。
「病院、抜け出してきたの?」
「…お、れ……っ……。」
神崎くんは続けなかった。
かわりにポタッと僕の手に滴が落ちてきた。
「神崎くん?」
「…っう……っく…。」
神崎くんの目からは大粒の涙が溢れては零れて僕の手に落ちた。
何かを我慢するようなあの表情。
彼はずっと泣くのを我慢していたのだ。
「神崎くん…ありがとう。僕は神崎くんのおかげでここにいるんだよ。君が僕を救ってくれた。僕のためにたくさんたくさんありがとう。」
「うっ、あ、、、あっ、あ"ぁぁっ、うぁぁぁぁっ!」
僕の言葉を聞いて神崎くんは僕に抱きついてくる。
そして子供のように大きな声でしゃくり上げながら泣いた。
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