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2-16
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「ねえ……篝」
「ん?」
「ちょっとだけ……抱きついても良い?」
何故か、無性に篝に抱きつきたくなって。
やっぱり俺は結構酔っているのかもしれない。
今迄する事はして来たが、誰かに抱きつきたいだとか甘えたいだとかそういった類の感情が湧き上がってくること等無かったのに……
俺はどうしたのだろう。
自分の心が自分のものじゃないみたいに蠢く。
どうしてそんな風に思ったのかは分からないが、酩酊も手伝って篝の綺麗な瞳をジッと見つめる。
「えっと……うん、はい。……俺で良ければいくらでも」
篝はポカンと口を開け目を宙に泳がせた後、戸惑いながらも少し照れ臭そうな表情を浮かべて頷いてくれた。
恋心なんて分からない。
恋愛感情なんて分からない。
でも俺は今、篝に抱き付きたいのだ。
篝の温もりを感じたい。
篝の許可を得て、まだ少し中身が残っている缶ビールをテーブルの上に置き、そっと篝に抱き付く。
……暖かい。
今迄抱いた事が無いような安堵感に包まれる。
ゆっくりと遠慮がちに俺の背中に回る篝の腕。
優しい温もり、優しい香り。
篝の心臓が、ドクンドクンと脈を打っているのが肌を通して伝わってくる。
酷い安心感に包まれ、酩酊も相まってか徐々に瞼が重くなっていく。
心地の良い微睡み。
「篝の心臓………ドキドキいってる…」
「……そりゃあね。好きな人に抱きつかれたら、ドキドキしちゃいますよ」
「……そういうものなの?」
「うん、そういうものだよ」
温かい温もりにつつまれたまま、そっと瞼を閉じる。
篝の言葉は、俺にはまだよく分からないけれど。
それでも、篝がそう言うならそうなのかもしれないと思えてしまう。
好きな人に抱きつかれたらドキドキする。
こんな俺にも、その気持ちがきちんと分かる日が来ればいいと、そっと願った。
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