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由貴と母が談笑しているのを聞きつつ、偶に自分も会話に混ざり一時の穏やかな時間を過ごしていると不意にポケットの中にある携帯がブルブルと音を立てて主張した。
携帯を取り出し画面を見ると、篝からの着信で。
部屋に戻ってからかけ直そうと思ったのに慌てて通話ボタンを押してしまい、まだ談笑を続けている二人を横目に携帯を耳に押し付けた。
『もしもし、由良?ごめん……今大丈夫?』
何日も何週間も聞いていなかったわけでもないのに、声を聞いた瞬間に何とも言えない靄がかったような熱い思いが込み上げてくるのを感じた。
心臓がドクドクと脈をたてる。
電話越しだと少しだけ低く聞こえる耳馴染みの良い声に無意識にホッと息を吐いた。
「うん……大丈夫。どうしたの?」
『今、やっと姉さんに開放されて自分の部屋に戻って来たんだけど何か由良の声が聞きたくなっちゃって。本当は今すぐにでも会って抱き締めたいけど、あと二週間会えないしね。……ああ、俺完全に由良さん不足ですよ』
篝は、いつもより甘える様な声色でそう言った。
篝の言葉はいつも真っ直ぐで一点の曇りも淀みも無くて。
嬉しさと照れ臭さが交互に襲ってくるような感覚に陥る。
後、数十年あるであろう人生の中でこんなにも愛情をくれる人なんて他にいる筈が無いと。
そう思わせてくれる篝は凄い。
……俺も篝にいつか、そう思ってもらえるくらいの愛情を返せたら。
「……俺も…早く会いたい」
ポツリと呟くように、でもはっきりと発した言葉。
気が付くといつの間にか周囲は静かになっていて、ハッとして視線を母と由貴の方に向けると由貴はニヤニヤと物好きのする嫌な笑みを浮かべていて。
一方、母は得体の知れないものでも見るかの様に驚きに満ちあふれた表情で俺を凝視していた。
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