アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3−1
-
京都の山裾にある、小さな美術大学。
修平が通う大学である。
洋画一回生は週に一度、ヌードデッサンの授業がある。
授業といっても教室は案外オープンで、別の学科の人間が混じっていても
とがめられることはない。
モデルの立つスペースを囲んで円を描くように椅子が並べられていて、
座り位置は早いもの順。
修平がスケッチブックを抱えて教室に入ったときには
モデル台の真正面最前列にすでに田口友夫が陣取っていた。
「あれ、田口さん」
「おー。泉」片手をあげて答える田口。
「田口さんデザインでしたよねぇ」
「デザインでも、人物デッサンが必要なこともある!」
田口はまだだれもいないモデル台に向かって鉛筆をにぎった腕を突き出して、
縮尺をはかるまねをした。
「はあ・・・。でもそこ、近すぎてしんどいですよ。」
「いやっ!なかなかここは取ろうと思って取れる席じゃないっ!」
「そうですか・・・。」
田口は急ににやけた顔になって修平のほうに身をのりだした。
そして小声で「今日のモデル、常磐貴子に似ているそうだな。」
それを聞いた修平は片頬だけで微笑むと、黙って田口の後方ななめ右側に座った。
・
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
11 / 66