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「まあ、美大生なのに絵かいてないやつ、けっこう居るけどなあ」
「え、そうなんスか?」
「おお、映画ばっか撮ってるヤツとかよ。あ~ゴム風船に色付きの石膏入れて
膨らましてるヤツもいたよ」
「なんすか、それ」
「知らねえよ」
田口とたわいもない話をしながら、修平はまた、ちいさく首をかしげた。
*
アパートに戻ると、桜の太枝に、鬼塚が器用な姿勢で寝そべっているのが目に入った。
気持ち良さそうに眼を閉じている。
修平は近づいて木の下から黙って鬼塚を見上げた。
鬼塚はゆっくりと目をあけて修平を見た。
「おかえり」
木の上から優しい声がした。
「ただいま」
修平は応え、少し迷って、だが思い切ってもう一度口を開いた。
「オニ、ちょっと聞き・・・。」
鼻先を突然、なにか黒いものがかすめた。びっくりしてあとずさる修平。
目で追うと、黒いものはすっ、と高みにあがってから、ひらりと近くの電線に止まった。
鬼塚が笑った。
「ツバメや」
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