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修平が桜荘の住人になって半年が過ぎていた。
一回生は一般教養の授業も多く、画材の費用を捻出するために、
アルバイトも始めたので忙しく、あっという間の半年だった。
宅配便が山梨の実家からの荷物を、修平のもとに運んで来た。
箱をあけると、甘い果物の香りが溢れ出た。
親戚の果樹園で作っている、葡萄だった。
修平が箱に同封されている母親からのメモを取り出す。
「下宿のみなさんに・・・か。」
葡萄の袋を数えてみる修平。
「・・・・11、12。12袋。管理人のおっちゃんにひとつっと。」
いちばん粒ぞろいのよさそうなのを一房よりわけ、修平は立ち上がった。
✳︎
その夜。
鬼塚が修平の部屋に入って来た。
修平は机に向かって腕組みをして座っていた。
「何してんの?」
鬼塚が声をかけると、修平は驚いてとびあがった。
「わっ!びっくりした!・・・あ、これ、実家から送って来た。」
鬼塚に葡萄の袋を手渡した。
「おおきに。わぁ、おいしそうやな。実家て、山梨やったっけ。」
「うん・・・。」
修平はうわの空の生返事。鬼塚、怪訝そうに修平の顔を覗き込む。
「どないしたん?」
修平は宙をみつめたまま「変なんだ。」
「何が?」
「11人いるんだ。」
「ああ、そんな漫画があったなあ。」
「そう、たしか萩尾望都・・・じゃなくて。」
ようやく修平は鬼塚の顔を見た。
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