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「夜ときどきいねえなあと思ってたらさ、いつだったか友達と飲みに行った時に
河原町でばったり逢ったんだよ。」
「河原町」
夜の繁華街と鬼塚。修平にはそのふたつがどうにも結びつかなかった。
「そう。しかも、若い女連れて、ホストクラブ入ってった。」
「うそ。」
「ほーんとだよ。・・てか、カノジョみたいなリアクションすんなよ。」
修平は顔がかっと熱くなるのを感じてさらにあわてたが、
田口はおもしろそうに笑っただけだった。
「後で聞いたらさ、バイトしてんだってさ。時々。知り合いのピンチヒッターとかで。」
「・・・・。」
「俺もさあ、なーんかイメージ違うと思ったけど、
でもそん時はけっこう決まっててさ、なんか、かっこよかったよ。」
「・・・・。」
二の句がつげない修平を置いて、田口がアパートに入っていこうとした。
「田口さん!」
「へ?」
振り返った田口に修平は尋ねた。
「鬼塚君の部屋って、何号室ですか?」
「部屋?さあ・・・・。あ。10号室じゃないの?」
田口はそのまま、アパートに入って行った。
*
部屋に戻った修平は学生名簿を探し出してめくりはじめた。
鬼塚の名前を探そうとして、学部も学年も、下の名前すら知らないことに気づく。
喉が、くっつきそうに乾いていた。
自分がひどく動揺していることに、さらに動揺をつのらせながら、
修平は窓の外を見た。
夕闇が迫っている。
風に吹かれた桜の枝が小さな音を立てて窓ガラスをたたいていた。
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