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7−1
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修平は鬼塚にひっぱられるまま闇雲に駆けて、人影が認められるところまで来たが、
暗くて事情がよく飲み込めなかった。
鬼塚が叫ぶのを聞いてやっと、目指す先に座り込んでいるのが広瀬だと解ったのだが、
現場に駆けつけてようやく、事の重大さに気がついた。
「大井が・・・動かへんねや。後ろに乗っとったんや。大井・・・。」
広瀬は錯乱しそうになっている。
「落ち着いて!広瀬君、救急車呼んだ?」
「まだ・・・まだや。」
「すぐ呼んで!あっこのタバコ屋の前!公衆電話あるで!」
鬼塚に強い調子で言われて広瀬はようやく腰を浮かせた。
「あっ、うん、そやな。そや・・・。」
広瀬は大井の方を振り返り振り返り走りはじめたが、
その片足が大きくひきずられているのに修平が気づいた。
「俺かけてくる。」
修平が広瀬を追い抜いてタバコ屋のほうに駆けていった。
広瀬はそれを見るなり、がっくりと膝からくずおれた。
両手でヘルメットの上から頭をかかえこんでうめいた。
「大井・・・どないしよう・・・。」
鬼塚は倒れている大井を観察した。
頭からも出血している。口腔からも血があふれている。体が細かく震えている。
大井の上衣の前を開けてみる。腹に強い打撲のあとがあった。
鬼塚は眉をひそめた。「やばいな。内臓やられてる・・・。」
顔をあげて広瀬の方を見た。広瀬はまだタバコ屋の方向をむいてうなだれている。
修平もまだ戻ってこない。
鬼塚は天をあおいだ。白い月が雲の向こうでぼんやりと光っている。
大井の顔が紙のように白く闇に浮かんだ。
鬼塚は唇を噛み締めると目をぎゅっと閉じて、大井の体に覆いかぶさった。
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