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「え?」修平と広瀬が同時に声をあげた。
「・・・・ですから、どこにも傷らしい傷がないんですよ。」
医師が困ったように繰り返す。
「そやけど、大井は・・・。俺がそばに行ったら白目むいて、口から血ぃ吹いて
腹押さえて、ほんで、ほんで、がたがたがたがた震えて・・・・!」
広瀬が喉から絞りだすように自分の見たことを話す。
「ええ、救急隊からも口腔から出血、ショック状態・・・と報告がありましたから
私どもも内蔵損傷の可能性が大きいと考えて受け入れ準備をしていたのですが・・・。
脈拍も血圧も、もちろん呼吸にも異常が見られなくて・・・。
画像診断でも内蔵の損傷は確認できません。頭蓋内のCT、今とっていますが、
こちらも今のところこれといって・・・」
「怪我・・・してない?」
「とにかく、万が一があってはいけませんから、今夜一晩はこちらで様子を
見ますけれど・・。」
医師が立ち去っていくのを見送って、広瀬がつぶやいた。
「どないなってんにゃ・・・。」
長椅子にどさっと腰をおろす。
「でも、でも、な・・・。どうものうて良かったわ・・・。ほんまよかった・・・。
あ・・・痛・・・。なんや安心したら急に足が痛なってきたわ・・。
あいたた・・。」
泣き笑いのようになっている広瀬の肩をさすりながら。
修平はまた、先刻のあの異様な情景を思い出していた。
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