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「せやけど、泉くんとは、すごい、ええ友達になれると思たんや・・・。」
鬼塚の視線を受け止めきれず、修平は眼をそらした。黙って立ち上がる。
「泉くん・・・。」
黙ったまま、修平は部屋の出口に歩いていった。
「やっぱり、あかんのんか。」
泣くような声で、鬼塚が言った。
「僕らは、おんなじ世界では住まれへんのんか。」
修平はドアノブに手をかけて止まった。鬼塚は彼の背中に向けてさらに訊いた。
「友達では、いられへんのんか。」
修平は背中向きのまま言った。
「・・・この話、他の人にしたことある?」
「・・・・ない。泉くんだけや・・・。はじめて・・はじめて話した。」
「うん。」修平はちいさく喘いだ。
「いずみ・・・」
「ごめん。・・・ちょっと出てくる。」
「待って。泉くん」
「・・・・おとなしく寝てろ。」
修平はそれだけ言うとさっとドアの向こうに姿を消した。
「なあ、泉くん。いず・・・」
鬼塚は追いすがろうとしたが、ふらついて立ち上がれず手をついた。
そしてドアに向かって四つん這いのまま、扉の閉まる音を聞いた。
「・・・・・・・。」
彼の眼からぽたぽたと涙が落ちて布団を濡らした。
髪がさわさわと逆立ちはじめ、その間から角が現れる。
牙がのぞいた口から嗚咽が漏れはじめた。
「う・・・・。う・・」
200年。
ずっと孤独だった。
けれど、これほどの哀しみもまた、知らなかった。
喪う痛みは、持たざる乾きの比ではなかった。
ただ、涙がとめどなく溢れ落ちた。
そのまま。
鬼は、布団につっぷして、幼い子供のように声をあげて泣いた。
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