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11−1
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1984年
再びの春。桜荘の桜も満開の時期を迎えていた。
その桜の木の下に、ゴザを敷いて座り込んでいるのは広瀬と大井だ。
真っ昼間だというのに缶ビールを片手にすでにかなり出来上がっている。
大井が声を張る。
「なんやこう、ごっつうビンボ臭いなあ!」
「なんでや」
「そんなんわざわざ自分とこの桜で花見せんかて、
清水(きよみず)さんとか平野神社とか・・・いろいろええとこあるやんか。」
広瀬が赤らんだ目元で大井を睨みつけた。
「あほう、そんなとこ行ってみい、花見ちゃうわ。人見や。
桜の木ぃより人のほうが多いんちゃうか~いうぐらいいてんで。」
「しゃーけどここはちょっと恥ずかしわ。」
修平が真っ白いキャンバスを抱えて帰って来た。
「何やってんの」
「ほら、言われたわ。」大井が嘆く。が、広瀬は今度は修平をにらんで管を巻く。
「見てわからんか?え?」
「花見・・・?」
「わかってんにゃったら聞ーくーな、っちゅうねん。」
「広瀬君、目すわってる」
修平が大井の方を見て苦笑すると、大井も困ったように笑った。
が、広瀬は全く気にする様子もなく、ふらりと立ち上がって修平の袖をひいた。
「ささ、泉くんもまぜたるわ。こっち、こっち座れや。さー遠慮はいらんでえ。」
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