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13−4
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「その人を離せ」鬼塚はゆらりと男たちに近づいた。
一人がナイフをひらめかせて鬼塚に飛びかかる。彼はふわりと飛ぶようにかわす。
「化け物は、死ね!」
男が再びナイフをふりあげたとき、鬼塚の体が稲光のように光った。
ナイフをふりあげたほうも、修平を押さえていたほうも、二人の男たちは同時に
雷にうたれたように部屋の端まで吹き飛ばされ、昏倒した。
同時に、部屋のドアが開いた。
「うわああああああああ!」
「ひいいいいいっ」
桜荘の下宿人たちが、部屋の入り口で引きつった声をあげた。
一番手前で腰を抜かしたように座り込んだのは広瀬だった。
吹き飛ばされた男の一人が、うずくまったまま声をあげた。
「皆さん、化け物です。捕まえてくださいっ!」
「違う!化け物じゃない!化け物なんかじゃない!」修平が叫んだ。
「私たちは化け物退治に来たんです。協力してください!」
下宿人たちは困惑したように男と修平を交互に見比べ、
・・・・そして恐怖にひきつったまなざしを鬼塚に向けた。
「なんや、あれ・・・。」
時間が、凍り付いたように感じた。
が、ふらつく鬼塚に修平ははっと我に帰った。
オニを。
逃がさなきゃ。
ここから。
修平は鬼塚の腕をつかんだ。
「行こう」
「・・・・・。」
修平は鬼塚の手を引いてドアのほうへ行く。下宿人たちは怯えて道をあけた。
彼らの前を通り過ぎる時に、鬼塚はひとりづつの顔をみた。
彼らの、自分を見る畏れをたたえた瞳をみて、哀しげな声で呻いた。
「みなさん、捕らえてください。世の中のためです。害獣ですよ!」
どうにか起き上がろうとしながら侵入者たちはなおもいいつのった。
「おい、泉・・・。」田口がうわずった声で呼びながら少し前に出た。
「来るな!」
修平は鬼塚の手を引いたまま振り返って強い声で言った。
「誰も、・・・来るな。」
修平の剣幕に気圧されて誰一人動けない。
手を引かれながら鬼塚も振り返ってもう一度下宿人たちを見た。
「オニ、行こう。」
二人が視界から消えても、まだ立ちすくんだままの下宿人たち。
広瀬が、尻餅をついたままつぶやいた。
「オニ・・・・?」
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