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15−4
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「な?そうしろよ。」
「泉くん。」若い医師が修平の肩にそっと手をかけた。
「そんな風に言われたら、ますます傷つけるのが辛いんだよ。」
「でも・・・。」
自分に出来ることといえば、これしか思いつかない・・・そう言いかけた修平に
鬼塚はつとめて明るい口調で言った
「こんなに・・・こんなようさん仲間がおったんやな・・・。
ぼく、もう、さみしないなあ・・・。」
「オニ。」
「な?泉くんもそう思うやろ?」
「野生生物の保護のために、人の上陸を禁じた無人島がある。」医師が言った。
「私たちが住むのに、ちょうどいい島だ。鳥や動物たちと、ひっそりと暮らすのが、
私たちには似つかわしい。・・・・人を襲わなくてもいいように、少し現代医学も
応用するよ。」
「・・・・・。」
「通力も衰えるかもしれない。が、人の生き血を飲まなくても、
(人並み)に暮らし、子を産み育て、細々と血を繋いでいくことはできるだろう。」
鬼塚はもう覚悟を決めているようだった。修平の目を見て言った。
「泉くん、僕、行くわ。」
「オニ・・・。」
一方の修平は、こころが追いつかなかった。
こんなに急に。突然に。
行くって。
だがあの野蛮な連中に命を狙われたことを思えば。
でも俺は。
でも。。。。
「僕、泉くんに会えて、ほんまに良かったて思てるで。」
「・・・・・。」
「ほんまに、おおきにな。」
大粒の涙をこぼしながら、彼はいつものように、にかっと笑った。
「僕、ほんまに、嬉しかったんやで。」
修平はなにも言い返せなかった。
もう自分に言えること、出来ることがなにひとつないのだと、思い知った。
悔しさで身体が震えるのを、彼は生まれて初めて経験していた。
鬼達がたたずんでいる、東の方角があかるんで来る。
医師が言った。
「夜が明ける前に、行きましょう。」
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