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16−2
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桜荘の住人たちは修平の部屋にあつまったまま、朝を迎えていた。
見るともなく、窓のほうを見ていた田口が、割れたガラスの間から異変に気づいた。
「おい、あれ。」
窓の近くに座っていた本田が窓を開ける。
「!」
「なんや、どないした。」皆が窓際に駆け寄って驚きの声をあげた。
樹齢二百年の桜の老木は、一晩のうちに枯れ果てて、朽ち木となっていた。
「枯れてる・・・・。」広瀬がうめいた。
「あっ。」
桜の木の下に、修平が戻って来ていた。
「泉!」
「泉君!」
桜を見上げていた修平は自分を呼ぶ声に顔を巡らせて部屋の窓を見た。
下宿仲間が窓際に重なるようにして自分を見ている。
大井が尋ねた。「泉君、オニ君は?」
彼は弱々しく、首を横に振った。
鬼塚はそれきり、彼らの前に姿を現さなかった。
そしていつしか彼らも、そのことを誰も、口にしなくなった。
枯れた桜の木は切り倒され、桜の根を守る為に残されていた桜荘も、
老朽化に耐え切れず取り壊されることになった。
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