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下宿に戻ると、一階の3号室のまえで、本田はズボンのポケットから鍵をとりだした。
「あれ・・・。」
「ん? ああ、鍵?ドアノブは換えられるんだ。ホームセンターに行けば、
鍵付きを売ってる。いくらなんでも不用心だろ。」
「はぁ・・・。こないだは気がつかなかった・・・。」
修平は感心しながら本田の後について部屋に入った。
室内には、一面に日本画の作品が立てかけられていた。
額装されたものもあり、厚いカーテンで遮光された窓も木製パネルでふさがれている。
本田はこんな部屋でどうやって寝起きしているのか。
「適当に置いてくれていいよ。どうもありがとう。助かった。」
「いえ、あの・・・。本田さん、ここで寝てるんですか?」
本田が笑いながら肩をすくめる。
「まさか。隣だよ。」
「隣?」
「3号室と5号室、二間借りてるんだ。あ、閉めるから。」
本田にうながされて修平はあわてて部屋を出た。
「で、でもこないだぶどう持って来たとき・・・。」
「絵の整理をするのにこっちにいたんだよ。なんで?」
もう、用は済んだといいたげな本田の顔に、修平はかぶりをふるだけにしておいた。
*
アパート前の桜の木の下で、修平はぼんやりと鬼塚を待っていた。
田口が帰って来て声をかけて来た。
「よっ。泉君、こないだぶどうサンキュー。旨かったよ。」
「あ、どういたしまして。」
「どうかした?誰か待ってる?」
「ああ、うん・・・オニにちょっと・・・。」
「オニ?あ~彼、今夜あたりお出かけじゃねえの。」
「え?」
「あいつ、時々夜いねえだろう。朝帰りしてんだよ。」
「え・・・。」
そういわれてはじめて、鬼塚を見かけない夜があったことを思い出した。
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