アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
8−1
-
救急指定病院の処置室。
ベッドに鬼塚が寝かされている。
傍らに困惑している初老の医師と若い看護婦。
「とても衰弱しているのは確かなんですけど・・・。」
看護婦の言葉に医師も口のなかでちいさく唸ってから
「交通事故の現場にいたんやろ? 大けがした人見て貧血でも起こしたか。」
「どうします?」
「ふ・・・・ん。ブドウ糖でもいれて、ちょっと様子見てくれる?」
「はい。」
初老の医師はそれだけ指示すると処置室を出て行った。
入れ違いに、細い銀縁の眼鏡をかけた若い医師が入ってくる。
「山野さん、婦長が探してたよ。」
「え?」
「急用みたいだったよ。行ってください。あとは僕がやっときますから。」
「そう・・・ですか。すみません。」
若い看護婦は訝しがりながらも出て行った。
医師は廊下に人気のないのを確かめてドアを閉めた。
鬼塚の上衣をはだけて肩のところを捲ってみる。
桜の花びらのような形のアザを確かめると、もう一度鬼塚の顔をじっと見た。
彼は青白い顔で昏睡していた。
*
別の処置室の前。廊下に置かれた長椅子に修平の姿があった。
俯いたまま、思い詰めた表情で一点を見つめている。
脳裏には先刻の異形の姿が浮かんでいた。
別室で手当を受けていた広瀬がやってくる。修平もそれに気づいて顔をあげた。
「どう?」
「うん・・・。」
足はまだひきずっていたが、その他のところは絆創膏程度だ。
「足も、たいしたことないって。」
「そっか。」
・
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
27 / 66