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8−3
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銀縁眼鏡の若い医師が、人目を気にしながら廊下を急いでいた。
手には白衣で隠すようにして、輸血用の血液パックを持っている。
鬼塚の寝かされている部屋に滑り込むように入ると、すばやくドアを閉めた。
室内のシンクで、コップに血液パックの中身を移し替える。
コップを伝って医師の指に血液が流れた。
細く、長い指に伝う血液をぺろりと舌でなめとった医師は、鬼塚に近づいた。
左手にコップを持ち替えて、右腕でそっと鬼塚の上体を起こす。
彼はうっすらと目をあけた。
目の前のコップを見、ゆっくりと医師の顔へと視線を移した。
若い医師は黙ったまま鬼塚を見つめて頷いた。
鬼塚はコップに自分の手を添えてそっと口をつける。
そのまま、中の血液を一気に飲み干した。
深いため息をついて、再び眼を閉じた彼の唇に、血の雫が光った。
医師はそれを自分の指でぬぐい、彼の頭をそっと胸に抱いた。
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