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「むかし、桜の木ぃと、桜に棲む鬼がおった・・・。」
鬼塚の声はかぼそくて、聞き取りづらいはずなのに、
修平の心に直接届くかのように、するりと耳に入り込む。
「・・・・・。」
「二百年くらい前・・・。
この桜が芽吹いたころは、このあたりに人はいいひんかった。
鬼らは、時々人里に降りて、人の生き血を吸うては、
また山に戻って暮らしとった・・・。」
「 だんだん山が切り崩されて、獣も鬼も、山奥に逃げた・・・。
鬼の子も、いっぺんは山奥に行ったけど、血ぃ吸う時以外にも、
時々人間の様子を見に行くようになった。」
「 鬼の子は両親を早くに亡くして、おじいちゃんものうなってからは、
ずうっと一人やった。
ひとりで、人間の子ぉらが遊んでんのを、いっつもこの桜の木の上から見てた。」
「 ずうっとずうっと昔は、人間と鬼はおんなじように一緒に暮らしてたんやって。
けど、人間は鬼をだんだん嫌いはじめて遠ざけるようになった・・・。
鬼は、人の生き血を吸わな生きていかれへん。けど、命までとるわけやない。
人食い鬼の話は、人間が作った。
鬼は人の心のなかで、どんどん悪いやつにされていったんや。」
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