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11−3
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「あのう」
修平が振り返ると、アパートの管理人の老人が、同年輩の婦人を伴って立っていた。
「あたしらも、ご一緒さしてもうて、よろしいでっしゃろか。」
「へ」きょとんとして動かない広瀬を無視して、修平が返事をした。
「あっ。どうぞどうぞ、さ、こっち座ってください。」
「ほうでっか。えらいすんまへんなあ。おおきに。さ、おときさん、こっちどうぞ。」
ゴザにあがりこむ二人。おときさんは近所の未亡人らしい。
鬼塚も料理を持って戻ってくると、すぐまた取り皿と箸の追加を取りにいった。
広瀬と大井はすっかり毒気を抜かれたようにおとなしくなっている。
老人は桜を見上げて誇らしそうに言った。
「ほんまに、毎年よう咲いてくれますなあ・・・。
この桜も、もう二百年以上になる、いうのに。
桜は普通、六十年程がピークで、あとは年老いて花付きもわるなるちゅうて、
言わはりますのになあ。」
おときさんはシワシワの頬を桜色に染めて言った。
「そら、やっぱり、重吉はんの丹精が、よろしいんですやろ。」
「いやいや、たいしたことはなんも・・・そやけど、ほうどうなあ、
お礼肥え、ちゅうてねえ。花のあとに油かすを、この根ぇのとこに・・・。」
勢いづいて喋りだす管理人をうらやましそうに見ながら大井がつぶやいた。
「じいさん花盛りやんか・・・。」
広瀬も同調する。「あやかりたいな・・・。」
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