アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3
-
龍弥と恋人として付き合うようになったのは、龍弥が大学一年の冬だった。それから2年間は、彰吾と三人でそれなりに上手く付き合えていたと思う。
彰吾とは仕事のパートナーで、たまに龍弥が不在の時に彰吾の家で会う以外、プライベートはあまり共にする時間はなかった。俺は実家暮らしで、全国を飛び回っている人気緊縛師の父親はほとんど不在なのでほとんど龍弥と二人生活をしていた。
とても幸せな時間だった。朝は愛しい龍弥の顔を見て目覚め、夜はまた龍弥の顔を見て眠る。俺が弟への恋心を隠すために避けていた思春期の数年間を取り戻すように、兄弟としても、恋人としても常に寄り添って同じ時を過ごした。
龍弥が彰吾のことを快く思っていないのはわかっていたし、だからこそ仕事以外のプライベートは龍弥と過ごしていたつもりだ。しかし、そんなのはその場しのぎでしかなかったのだ。俺の都合よく動いていたに過ぎない。
大学三年頃から、龍弥の就職活動が始まった。
『兄さんを養えるくらい頑張るから!いい企業に就職して、頑張って出世するからね!』
龍弥は口癖のようにそう言っていた。たぶん、俺を囲いたかったのだと思う。安定した職業、福利厚生とボーナスがしっかりした会社。スポーツマンの龍弥にはスーツは似合わなかったが、龍弥はとにかく一流企業ばかりを選んで、自分のしたいことは二の次といった感じで手当たり次第面接を受けていた。そして三年の秋、内定を決めた。それは誰もが知っている食品会社で、大学内でも同級生たちに羨まれるほどだった。
『東京に本社があるんだ。どこの部署に配属になるかはわからないけど、たぶん営業かなぁ。俺、ずっと兄さんと一緒にいたいから、東京に本社のあるとこ狙ってたんだ』
目を輝かせている龍弥に、俺のことばかり考えて決めたという内定に一抹の不安を感じつつも、俺は素直に喜んで祝福した。
『おめでとう、龍弥。再来年の春には、毎日スーツ姿の龍弥にいってらっしゃいとおかえりなさいのキスするね』
『うわ、なんかそれ、今と変わらないはずなのに新婚っぽい。早く働きたいなぁ』
4年になって、適当に卒論を終わらせた龍弥はバイトに遊びに明け暮れながら、俺の時間の許す限り一緒に居たがった。旅行も行った。たくさんの時間を共に過ごした。本当に幸せだった。
だけどその頃から、俺と彰吾のコンビが確固たるものとして売れ始めたのだ。見た目もいい彰吾は時々モデルもやり始め、一緒にメディアに取り上げられるようにもなった。
それがいけなかった。
兄弟で、男同士で付き合うリスクを龍弥に背負わせたくなくて、龍弥には俺との関係を公言しないように言っていた。彰吾に目がいっている間は龍弥の存在はばれないだろうと思っていた。俺は龍弥を守っているつもりだった。しかしそれは、龍弥を傷つけるだけでしかなかった。
なんで成宮ばっかり。俺のことは隠して、まるで愛人みたいじゃないか。俺だって兄さんの恋人なのに。一番好きだなんて口先だけならなんとでも言える......
龍弥はいつもそう叫びながら俺を抱いた。
『好きだよ、龍弥が好き。守りたいの、龍弥を傷つけたくないの......心は繋がってる。誰に認められなくても、龍弥は俺の大切な恋人だよ』
俺はその度にそう言って大きな身体を抱き締めた。日に日に激しくなる束縛とセックスを受け入れ、俺は仕事を減らした。彰吾との時間はますます減って、一ヶ月以上仕事でも会わなければ電話もしない日々が続いた。人伝いに彰吾の活躍を聞くと胸が締め付けられた。それでも、龍弥を切り捨てるなんてことは俺にはできなくて、彰吾にはきっと愛想を尽かされたと思う。そのことで俺が泣く権利なんて、ない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
5 / 214