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季節は秋に変わろうとしていた。雅は全国各地のフェチイベントやショーに引っ張りだこで忙しそうにしている。アイリスやその他企業からのオファーもあるようだが、一般向けのモデル業は一切受け付けていないらしい。それは恐らく、龍弥の目に触れるのを避けるためだろう。
セックスと縄に溺れている。今日も、ショーが終わると群がる男たちに過剰なサービスをしている姿が見えた。
「あ、あの......」
不意に話しかけられて振り向くと、そこには相変わらずの黒ずくめに七三分けの男が恐縮そうに立っていた。
「あぁ、轟さん、でしたか。今日も雅を見に?」
「は、はい......最近ますます、綺麗になられましたね」
「ええ、まぁ......」
「姫......いや、雅さん、大丈夫でしょうか」
「大丈夫、とは」
「いや、あの、その、私などが大変差し出がましいのですが......あの、あまりにも無理をされているようで、最近は見ていられないのです」
「......」
「成宮氏と出会う前より、さらに......殻に、閉じ籠っているような」
「......おっしゃる通りですよ。そして、父親なのに何もしてやれない。面目ありません」
「そんな、東雲さんは!......やはり、成宮氏がいないとだめなのでしょうか。成宮氏は、本当に雅さんを捨てられたと思いますか?なにか、行き違いなどあったのでは......」
「俺もそう思って何度か連絡を試みているのですが、海外にいるようでなかなか捕まらんのです」
「蓬莱氏はどうです、さすがに弟子の連絡先くらいご存じでしょう」
「それが......蓬莱さんも、少々野暮用で捕まらなくて」
「なんと......そう言えば最近見ませんね」
「全く、不肖な息子で申し訳ありません」
「い、いいいえいえとんでもない!私は雅さんの......本当の雅さんを知っております。心優しくて笑顔の愛らしい方です。も、もちろん今の姿も魅力に溢れていますが」
「......こんなことをお願いするのも申し訳ないのですが、変わらず雅を見守ってやってください」
「わわわ、あ、頭を上げてください!」
雅は愛されている。素直にその愛を受け止めれば誰よりも輝けるはずなのに、自らそれを跳ね退けて孤独と共に生きようとしている。
どんな状況であれ、愛する人との別れは精神を崩壊させうるものだということは、俺は身を持って知っている。そこから立ち直るには、もう一度龍弥や成宮とよりを戻すか、あるいはそれ以上の存在と出会うより他ない。
「......情けないもんで、俺は何もできない......見守ることしかできないんです」
「東雲さん......」
一瞬雅がこっちを見たが、薄く笑ってすぐに男の腕に抱かれていた。
しかし、不器用な雅の目がどこかすがるように見えたのは、気のせいばかりではないと思う。
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