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「ヤバい状況だからって聞いて来てみたら、なによろしくやってんだよ」
辛うじて下着は穿いたが何をしていたかなど一目瞭然だった。俺はさすがにばつが悪くて目をそらしたが、俺の頭をぽんぽんと撫でて芹沢さんが軽い調子で言った。
「東雲さん、お疲れ様ですー。まぁそう責めない責めない。人間誰しも自棄になっちゃうことあるじゃないですかー」
「別に責めるつもりはねぇけど。大丈夫なのか?」
「生憎俺のチンコは小さいので問題なかったですね。出血もないしそう酷くはないけど、一応影山先生に診てもらうように予約しときましたよ」
「悪いな」
二人が会話してる間に服を着込んでしまう。芹沢さんは真剣な顔で話しているが下半身丸出し状態だ。床に落ちていた下着とズボンを手渡す。
「あっ、ごめんごめん」
「さっさとその粗末なもの仕舞え」
「はーいはいはい」
「あと、客層はちゃんとチェックしろよ。最近は緊縛師も若いのがごろごろ出てきてるらしいな」
「その点はほんと、申し訳ありません。若い子が必ずしも悪い子ばかりというわけじゃないんですけどね。やっぱり蓬莱さんが欠けたのが、なんとなく緊縛界の士気を下げてると言うか、品格を下げてると言うか......どうなんです、最近、蓬莱さん」
「あー、うん、また連絡する」
蓬莱さんの話になると、最近父さんはどうも何かを隠しているようだった。気になる気もしたが、必要とあれば俺にも話してくれるだろうし、父さんから聞かなくても蓬莱さんから連絡があるだろうと思って深く尋ねるのはやめておいた。
「まぁ俺も頑張らんといかんのかなぁ。めんどくせぇなぁ」
「そうですよ、東雲さんが引っ張ってってくださいよー。東雲さんこそ弟子は取らないんですか?」
「そんな大仰なことは性に合わん。ところで雅」
「なに?」
突然話を振られて顔を上げると、父さんがふわりと俺を抱きしめた。
「ったく、どうしておまえはいつもいつもそうなんだよ。めちゃくちゃに抱かれたきゃ俺がいるだろ」
「......うん」
「不安になったら何度でも言ってやる。俺だけは、たとえ地獄のさらにその先だって、どこまでもおまえと一緒にいてやるから」
「......ん」
「芹沢とか、知ってるやつならまだいい。自分を安売りするな」
「......」
「芹沢も言ってただろ。おまえは十分魅力があって価値がある。低俗な輩の相手なんかしなくても、おまえを大切に思ってるやつは他にもいるじゃないか。ほら、あの、黒ずくめのオッサンとか」
「......うん。俺、轟さんに謝らなきゃ......」
「そうそう、轟さん心配してたよぉ。俺だって雅くんのことは大事に思ってるからね。それにそうだ、ユキちゃんからも連絡あったよ」
「ユキ?」
久しぶりに聞く名前だ。
「雅くんが復帰した後のイベント、何回かインターネットの動画配信したんだよ。それ見て、雅くんが普通じゃない、何かあったのかって、俺に連絡が来た。またユキちゃんにも連絡してあげな」
「......ん」
「成宮や龍弥の代わりはいなくても、おまえはひとりぼっちになったわけじゃねぇよ。ほら、病院行くぞ。そうだ、影山のオッサンだっておまえのファンじゃねぇか」
一人じゃない。
龍弥や彰吾が特別すぎて、何もかも見落としてしまっていた。
アングラの世界に入るまでは本当に一人だったかもしれないが、今はたくさんの仲間がいて、ファンがいてくれた。その人たちを見捨てるのはなんて失礼なことだったのか、そんなこともわからなくなっていたのだ。
「......芹沢さん、ありがとう」
「いえいえ、俺はなにもしてないよ」
「また、仕事くれる?」
「喜んで」
「おい、芹沢だけかよ、俺には?」
「父さんにも感謝してるよ」
「お、珍しく素直だ」
「なにそれ。言っても言わなくても文句言う」
「あはは、仲良し親子だねぇ」
そして俺と父さんは、芹沢さんに挨拶をしてその場を離れた。
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