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「俺には恋人が二人いたんです。同時に同じだけ好きになって、一人に決められなかった。一人は仕事の仲間で、もう一人は......実の弟でした」
弟と言ったところで、さすがの先生も驚いている様子だった。
「俺はずっと弟のことが好きで......でも、諦めなくちゃいけないと思って、彰吾に......仕事仲間に告白されて付き合ったんだけど、色々あって、弟も俺のこと好きになってくれて......一人を選べなかった俺に、二人は三人で付き合うことを許してくれたんです。でも、弟の愛情が大きくなればなるほど、俺は幸せなはずなのに苦しくなっていった......彰吾は弟のことも含めて俺を受け入れてくれてたけど、弟はやっぱりどこまでいっても三人で付き合うことを快く思ってなかった。当然、なのはわかってる......俺が甘えてたんです」
龍弥のことを想うと涙が零れるのを止められなかった。
「今年就職したんです。誰もが知ってる企業。勤務先が大阪に決まって、ついてきてほしいって言われた。でも......」
今、俺がいるのも大阪だ。いつもより近くにいるのかもしれないと思っただけで胸がつまった。物理的に近いだけで、心はもう二度と近づくことができないのに。
「ついていくことが、弟の幸せになるのかわからなくなってた。弟は元々ノンケだし、カッコいいし、良いところに就職して、もっと普通の幸せがあるはずなんだ。女の人と恋愛して、結婚して、家族になる......俺が、龍弥から幸せを奪うことになるのが恐かった。幸せになってほしい......この世で一番愛してる。龍弥......」
久しぶりに名前を口にした。それさえも憚られるような気がして唇を噛むと、嗚咽が漏れた。
「彰吾くん、は?」
「ひっ......ぅ、彰吾は......龍弥が大学を卒業する少し前から、距離を置いてた。龍弥の束縛が強くて、彰吾は俺に......俺と龍弥に気を遣ってたんだと思う......ちょうど仕事も波に乗ってたから、......今はアメリカにいるはず」
「しょーごくんと、別れたん?」
いつの間に起きていたのか、ユキがもそりと起き上がって言った。俺の涙がユキの頬を濡らしていた。そのせいで起こしてしまったのかもしれない。
「別れ......はっきりとは、お互い何も言ってない。でも、もう半年近く連絡もないから、忘れられちゃったかもね」
「そんなわけない!しょーごくん、みやたんのことめっちゃ好きやったもん!絶対嫌いになったり、忘れたりするわけない!」
「ふふ......うん、俺もそう思う。彰吾には誰よりも愛されてた......」
優しい笑顔は、今でもすぐに思い出せた。
「ほな、しょーごくんに連絡......」
「でも、いっぱい傷つけた。悲しませた。幸せにしてあげれなかった。新しい場所で俺を忘れて前向きに生きてるかもしれない......なら、邪魔したくない。もう、彰吾に甘えてばかりいるのはやめたいんだ」
「みやたん......」
「好き......それでも俺は、龍弥も彰吾も愛してる。そしてそれは、二人を傷つけることにしかならない。だったら俺はもう、一人で生きてく。二人にはきっと幸せになれる道があるはずだから」
「そんなん、みやたんは?みやたんは二人おらんと幸せになられへんのやろ?」
「父さんがいる。蓬莱さんも、轟さんも、ユキもいる。それで十分」
「ちゃうやん......そりゃ、俺だってみやたんのこと好きやで?めーっちゃ好き。でも、みやたんは先生ちゃう。恋人は特別やん。俺は、先生がおらんくなるなんて、先生と別れるなんて考えただけでも死にそうになる」
ユキの言う通りだった。誰に愛されても満たされない感覚。父さんの身体に龍弥の身体を重ねて、轟さんの優しさに彰吾の優しさを重ねてみても、それは別物でしかない。
「いいんだよ。これが一番。俺はもう、誰も傷つけたくない。誰にも迷惑かけたくない」
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