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「ありがと、ユキ」
「もっともっと大阪おったらええのに。家やったらなんぼでもいてくれてええんやで?」
AV撮影をした翌日はユキと大阪観光をして、夜は先生も一緒に新世界で串カツを食べた。そしてさらに翌日、俺は東京に帰ることにした。
「これ以上ユキといたら頭がおかしくなりそう」
「キィー!なんでそういうこと言うん!」
「先生と別れるのは名残惜しいけど」
「またいつでもおいで。東京出張がある時は東京を案内してくれるかい?」
「喜んで」
先生と連絡先を交換すると、ユキが割って入ってきた。
「ていていていてい!なんでそんな仲良くなってんのさ!」
「だって先生、優しくて知識豊富で理想の先生だし」
「雅くんは真面目で賢くて理解力があって理想の生徒だし」
大阪観光をしてもらっている間は、先生の特別授業を受けているようだった。古典の先生らしいが、歴史にも詳しくて色々な話を聞かせてくれた。身体を開くことなく楽しい時間を過ごせる相手は俺には少なくて、先生と過ごすのはとても楽しかった。
「そうそう、来月東京の大学でやる講演会に招かれてて、俺も少し登壇するんだよ。一般公開されるから、よかったらおいで」
「わあ、絶対行きます!楽しみ。どんなお話されるんですか?」
「古今集の中からいくつかの人事詠や自然詠を取り上げて、当時の背景を読み解くんだ」
「へぇ......俺、古典や歴史は知識が少なくて......だからすごく興味深いです」
「少ないと言いながら、昨日もかなり食いついていたじゃないか。俺の生徒の中で誰よりも優秀だよ」
「うー、うー、おいてけぼりだよぅ」
「祐希は万年赤点だったもんな。優しい俺のテストで0点を取ったのは後にも先にもおまえだけだよ」
「そんな......そんな15年も昔の話......っ」
「15年?ユキは永遠の18歳じゃなかったんだ。そっか、もう31かー」
「キー!なんなのさ!二人して!ふんだふんだふんだ!」
「あはははは」
ユキといるのは本当に楽しかった。大阪にいる間、ずっと笑っていたような気がする。でも、俺の居場所はここではなかった。
「はぁ。ユキといると笑い疲れる」
「幸せなことやろ?」
「うん。でも、俺はあっちで頑張るよ。父さんも心配だし」
「うん......でも、ほんまにいつでも来てな?また一緒に仕事しよな。なんかあったらいつでも頼ってや?あとな......」
「なに?」
「......ごめん。実は......昨日の晩、しょーごくんに連絡取ったん」
「え?」
突然のことに思考が一瞬停止した。なぜ、ユキが?
「みやたんに会いたい言うてた。今やってる仕事が終わったら絶対帰国するからって」
「......ごめん、もう新幹線の時間だから行く」
「みやたん!しょーごくん、色々あって連絡先変わったんやって、あとで連絡先送るから、絶対連絡取り!」
「祐希」
「先生、さようなら。ユキとお幸せに」
「みやたん!絶対やからな!」
「祐希、落ち着け......またね、雅くん」
手を振る先生に背を向けて、俺は振り返ることなく電車に飛び乗った。東京までの時間、俺は考えたいのになにも考えることができず、ユキの過ごした時間さえ遠い記憶のように感じ、ただ時空を彷徨うように思考を停止させた。
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