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「ジョージが言ってましたよ、日本にいた時に見た作品より、さらに良くなってるって」
俺は今、ニューヨークの片隅にあるアパートで柚木と二人で暮らしていた。日当たりの悪さは東京のアパートより酷いが、柚木は写真にはちょうどいいと言って気に入っているようだった。住めば都と言うわけで、俺もそんなに不満はない。
「コーヒー飲みます?」
「ああ」
柚木からコーヒーの入ったマグと、ついでにと渡された資料を受け取る。
「さっぱり読めん」
「いい加減少しは英語覚えたらどうなんですか」
「柚木サマがいるからノープロブレム。訳して、これ」
「俺だって別に得意な訳じゃないんですからね。あーあ、雅さんがいればなぁ。あー、雅さん恋しいなぁ」
「......」
「そうだ知ってます?雅さん、最近またショーに出てるそうですよ」
「え」
アメリカに来て数ヵ月、俺は雅との連絡を一切絶っていた。一度でも声を聞いてしまえば堪らなくなるのはわかっている。雅から連絡が来るとも思えなかったが、こっちに来て日本で使っていた携帯も解約したので向こうからかかってくることはない。柚木は雅と連絡を取ろうと思えば取れるのだろうが、今のところ連絡を取り合っている様子はない。しかしどこからか雅の情報を仕入れてきては俺に報告してきた。
「ちなみに、アイリスとかの普通のモデル業はやってないみたいですね」
「......ふーん」
「あ、ショーの動画があったんですけど、見ます?」
「......いらん」
「強情」
「うるせぇ」
柚木は俺の手から資料を奪うと、簡単に訳して説明してくれた。次回の打ち合わせないようだった。俺たちを発掘してくれたアメリカのアーティストであるジョージは、雅がいないことを大層残念がったが、元々は柚木に惚れ込んでいたこともあって俺も柚木も歓迎された。こと俺については、縄がより繊細になったとか、時々クレイジーさがあるのが魅力だとか、自分にはよくわからないがお褒めの言葉をもらっている。
「確かに最近の成宮さんの縄も良いと思うんですけど......やっぱり、忘れられないな」
柚木はそう呟くと、本棚から一冊の本を取り出した。
一番最初の俺たちの作品が載っている、七人の緊縛師による雅の写真集を。
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