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翌日はちょうど祝日だったので轟さんも休みだろうと朝から電話を掛けてみた。
「もしもし、雅です。おはようございます」
『もっもももも!しもし!』
相変わらずの吃りっぷりも、だんだん気にならなくなってきた。
『おお、おはようございます......あの......?』
「今電話まずいですか?」
『いえっ!全く!』
「なら良かった」
『ああぁ、あの、ひ、姫......ちょ、調子はいかがですか......あの、お体とか』
「もうすっかり元気ですよ。ユキと5回もセックスできるくらいには」
『ファッ、ファーッ!そそ、それっ、それです、それ!!』
「観てくれたんですよね。父が、この間轟さんとばったり会って言ってたって」
『み、み、見ましたとも......!あっでも、あの、えっと』
「感想聞きたいから......今日、これから会えませんか?」
『ヒェッ!?』
「だめ?」
ヒッ、だか、ヒョェッ、だか、電話の向こうでは轟さんが落ち着きなく奇声を発して笑ってしまう。
「この時間からだから......どこかでお昼ごはんご一緒しましょうか。それとも、轟さんのお家にお邪魔しようかなぁ......外デートと家デート、どっちがいいですか?」
『どっ、どどっど、どっちって』
「あ、今日は昼から雨って言ってたから、お家に行っちゃおうかな」
『ヒィ』
「だめ?」
『だっ、だだ、だめではないですが!そそ、その、か、片付いておりませんし、姫をお招きするような家ではないというかその!』
「俺は気にしないけど。俺が行ったら迷惑かな、やっぱり......」
『めっ!迷惑など!そんな、あの、う、うちで良ければぜひ......っ!』
「わーい。じゃあ、お昼過ぎにお邪魔しますね」
それから家の住所を改めて教えてもらって電話を切ると、後ろから父さんに抱きすくめられた。
「わっ。なに、起きたの」
「おまえ、今日はあのオッサン誑かしに行くわけ?昨日は俺とあまぁい一時を過ごしたと言うのにか。薄情者」
「なんで父さんと毎日いちゃいちゃしないといけないわけ」
「冷たい」
「朝ごはんは作っといてあげたじゃん。優しいでしょ」
「優しくて涙が出るね」
ブツブツ文句を言う父さんを尻目に、俺は出掛ける準備をした。
こんな風にたわいもないことを話していると、まるで日常が戻ってきたかのようだった。いや、これが日常だ。彰吾と龍弥がいた頃は、きっと夢の中だったのだと思うことにする。
出発前にパソコンからメールチェックをすると、数件仕事のメールが届いていた。主にイベント企画のお誘いだろう。それぞれに軽く目を通して急ぎの案件がないことを確認すると画面を閉じた。
「じゃあ行ってくるから」
「へいへい」
「夜には帰ってくるから、夕飯は一緒に食べよ」
「はいよ。気をつけてな」
「うん」
自然に俺は父さんにキスをしていた。まるで恋人同士じゃないか。一瞬きょとんとした父さんがにやにや笑っている。
「可愛いことするじゃん」
「気の迷い。じゃあね」
「まてまて」
靴を履いたところで後ろを振り向かされ、唇が降りてくるのを受け止めた。
いつかした恋人ごっこが、本物になりそうだ。母さんがいた頃だって、こんな甘ったるい父さんを見たことがない。
それも悪くないかと思うことにする。
そうやって、意識的に俺は平静を装うしかできないのだった。
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