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「蓬莱さん!?」
俺は素直に嬉しかった。蓬莱さんとももう1年近く会ってない。元々そうしょっちゅう会っていたわけではないけど、こんなに長く会わなかったのは初めてだった。待っていてくれと言われて、大人しく蓬莱さんだけを待っていたわけではない。その間にAVデビューまで果たし、轟さんやいろんな男に抱かれた。そんなことが蓬莱さんに知れたら怒られるだろうか。でも、40も離れていてうんと大人だからか、きっと俺を嗜めはしてもけして見放しはしないだろうと、また勝手なことを思う。思いきり甘やかされたかった。歳を重ねたあの手がとても恋しかった。キザなセリフを聞きたかった。蓬莱さん全てが懐かしくてとても恋しくなった。
また不純なことを考えている。でも、蓬莱さんならそんな俺を丸ごと受け止めてくれるだろう。父さんにだって十分甘えていたけど、今は全部を蓬莱さんに話してなんてことないように聞き流してほしかった。
「いったいどこに行ってたの?会いたいな。今はどこにいるか、父さんは知ってるんでしょ?」
直接俺に連絡をくれればいいのに、どうして父さんを介するのか不思議に思いながらも、蓬莱さんに会えるのが楽しみになって俺は父さんに訊ねた。
「今は、名古屋の自宅にいるらしい。......蓬莱さんもおまえに会いたがってるよ。おまえ、明日は暇か?」
「え、うん、休みだけど......明後日は朝から撮影がある」
「日帰りでいい。明日、一緒に名古屋に行こう。あー、ついでに旨いひつまぶしでも食って帰ろうぜ」
なんだか、父さんの様子がおかしい。それに、蓬莱さんにも違和感がある。いつもなら東京まですぐに来てくれるのに、名古屋の、しかも自宅に俺だけでなく父さんも呼びつけること。何か考えているのだろうか。父さんと二人で何か悪巧みでもしてるのか......
父さんに聞いてもどうせ教えてくれるまい。まぁ、明日蓬莱さんに会えることは間違いない。それなら蓬莱さんに聞けば済むことかと、俺はそれ以上気にしなかった。
「楽しみだな。蓬莱さんと仕事もしたいなぁ」
「あぁそういや、ユキちゃんはともかく、神楽坂と玄道のやつはカンカンだったぜ。やれ神楽坂じゃ雅の良さを潰してるだの、やれ玄道は雅の身体を分かってないだの、文句しか言ってなかったな」
「あはは。じゃあ蓬莱さんに俺の最高傑作作ってもらわなきゃ」
「......そうだな。できればいいな」
「ユキのやつは何か言ってた?」
「あの人はユキちゃん嫌いだからなぁ。まあでも、雅が楽しそうだから構わんとか、上から目線なこと言ってたな」
「ユキのこと嫌いなの?初めて聞いた......けど、まぁ分かる気がする」
「あのオッサンにユキちゃんはどう考えても合わんだろ」
「ふふふ、そうだね。でも父さんは好きなんでしょ、ああいうタイプ」
「俺はエロ可愛い子が主食」
「はいはい」
「安心しろ、一番はおまえだよ」
「いらないよ、そんな取って付けたようなご機嫌取り」
「本心だよ」
食事中だと言うのに、顎をすくわれて恋人のようなキスをされたら怒れなくなってしまう。最近父さんを格好いいと思ってしまうことが増えて困る。龍弥に似ているからだと、自分に言い聞かせてるけど。
「俺だけはおまえの側を離れない。いつどこで何があっても、俺の所に帰ってこい」
「......うん。ありがと」
急に真剣な顔で言われて驚くも、それが嘘のない言葉だとわかるから、俺は父さんに口づけを返した。
その言葉に含まれる意図が、この時の俺にはまだ全然わかっていなかった。
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