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4時過ぎになってチャイムが鳴り、俺は玄関まで迎えに出た。
「よぅ。元気か?おまえまた痩せたんじゃねぇ?しっかり食えよ、病人に合わせてねぇでよ」
「......痩せてないよ。先週も会ったばっかじゃん」
父さんは父さんなりに俺のことを心配してくれているのだと思う。それがわかるから、父さんに会えるのはやっぱり嬉しいと思う。父さんが雑な手つきで俺の頭を撫でるのは、同じ行為でもやっぱり一豊さんの手つきとは違って安心する。
「もう一人の方は?」
「もうじき来る。その前に蓬莱さんと話しておくことがあるからな。どこにいる?」
「やぁ、わざわざ悪いね」
リビングの扉が開き、一豊さんが廊下に現れた。少し動くだけで噎せるように咳き込んでいて、俺は慌てて駆け寄り背中を撫でた。
「ゲホッ、ゲホッ......あぁ、すまない、大丈夫......あっちで話そう。雅、応接室を使うからお茶を用意してくれるかな。後で来る男もそっちに通すように」
「......はい」
「そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫だよ。今夜は久しぶりに可愛がってあげるから。ね?」
「......ん」
「いい子だ」
きっと、ねだってみたとしても俺は二人の中には入れてもらえない......そんな気がしたから、素直に言うことを聞くしかできない。応接室に入って行く二人を見送ってから、俺はキッチンにお茶の用意に入った。
広すぎる家は、同じ屋根の下にいることがわかっていても物音一つ聞こえなくて不安になる。さっきまで一豊さんが座っていたソファーに無造作に置かれた膝掛けが見える。それが、この家にはまだ人がいると思わせる唯一の物のように感じた。
父さんと話すことがあるらしいから、お茶を持っていくのはもう一人来てからでいいだろう。冷蔵庫の中身を確認して、夕飯のメニューを考える。今時はネットスーパーなんて便利なものがあって、家にいながらにして必要なものは何でも手に入る。とはいえ、最近は一豊さんが食べられそうなものしか考えていなかったから、肉や魚の類いがない。デリバリーで済まそうかとも思ったけど、何もせずにいるのも落ち着かなくて、後で買い物に出掛けようかと考える。その内にチャイムが鳴って、俺はまた玄関まで出迎えに行った。
「やぁ、どうもこんにちは」
「こんにちは。ようこそいらっしゃいました」
「はじめまして......ではないけどね。はー、いくら蓬莱さんとてまさかほんとに雅くんと結婚するとは思わなかったなぁ」
「えっ......と、もしかして」
「僕も一客さ。蓬莱さんとは古い仲でね。雅くんのステージも何度か見させてもらったよ」
「そうでしたか......すみません、覚えてなくて」
「いやいや、ほんとに一客だからね」
父さんと同じくらいの年齢だと思うが、細身の身体に茶色のスーツと銀縁眼鏡が似合うお洒落な人だった。
「東雲さんはもういらっしゃってますよ。どうぞこちらに」
「お邪魔します。はー、噂には聞いてたけど、豪邸を通り越してお屋敷、って感じだね」
親しげな口調は見た目通りの優男という感じだ。この人とも寝たことがあっただろうか。左手の薬指に指輪はあるけど、そんなもの当てにならない。誰と寝たかさえ覚えてないほど手当たり次第にセックスしていた過去の自分に内心苦笑しながら、男を応接室に案内した。
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