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(Side:彰吾)
ようやく長きに渡るプロジェクトの終焉が近づいてきた。今はニューヨークの有名なギャラリーで展覧会を開催していて、アメリカ各地でインスタレーションも公開されている。俺は毎日あっちこっちのステージでショーを披露していた。こっちでは緊縛がアングラのものという雰囲気は全くなかった。まぁ、今回のプロジェクトはSM的な緊縛というよりはアートに特化したところがあるから、それもあって老若男女あらゆる人に見てもらえた。
「すっごいですよ!アメリカの超有名アーティストのアルバムジャケットに成宮さんの緊縛を取り入れたいって、今ジョージから連絡ありましたよ!」
「うぇっ、ウソ、マジで?」
「マジもマジっすよ!他にも色んなディレクターとかが広告に使いたいとか、めっちゃ反響あるって興奮してましたよ!もちろん、カメラマンは俺で!」
「うわー......すっげ、ウソ、信じらんねぇ......」
今回の展覧会はメディアでもかなり取り上げられ、今更ながらジョージという男の凄さを知った。それに便乗するように俺にも次々と仕事が舞い込んでくるのが、自分のことという実感が湧かずに他人の話を聞いているように感じた。
「もうちょっとリアクションしたらどうなんですか!もう俺、興奮して鳥肌が引かないんですけど!」
「お、おぅ......いや、実感がないっつーかさ......柚木の写真が良かったんだって、やっぱ」
「なに謙遜してるんですか!そりゃ俺だって一緒に作品作りしたわけですけど、ステージでのショーは成宮さんの特権じゃないですか!もっと自信持ってくださいよぉ」
珍しくアルコールを飲んでいる柚木は終始興奮した様子でいた。
「まだしばらく一緒にアメリカにいられそうですね」
「おぅ、世話になるぜ、相棒」
買い物くらいなら一人でも行けるようになった。少しは友達もできた。ジョージの英語は早口で相変わらず聞き取れないが、他のスタッフも優しいし仕事をするにはこの上ない環境だった。柚木とは生活も仕事も常に一緒で、この一年でますます距離が近くなった。......というか、柚木がアメリカに感化されたのか、最近妙にスキンシップが激しい。
「成宮さん」
ほら、ソファーに座っていた俺の足を跨ぐように乗っかってきたりして。
「おまえ酒弱すぎんだろ。ビール一本で酔ってんのか?」
「勝利の美酒ってやつですかね、今日はすこぶるいい気分なんです」
「おー、そりゃ良かったな」
「俺、もっと成宮さんと仕事したくて」
「俺も、おまえと仕事すんの好きだぜ」
柚木のことは好きだ。しかしそれはあくまでも、仲間として。
「まだ俺とニューヨークにいてくれますよね」
「そりゃ、そんだけ大仕事貰っといて投げ出せねぇわな」
「でも、日本に帰るでしょ?」
「......」
「帰って、くださいね。それからまた、こっちに戻ってきて......」
仕事は次々に来ているが、とりあえず一区切りだ。そうしたら、日本に帰って雅と話をする......それは、ずっと前から柚木とも約束していたこと。
「何泣いてんだよ」
「泣いてませんから」
柚木は、俺が好きなんだと思う。
昔からリスペクトしてくれてんのは知ってたけど、いつの頃からか向けられる視線の中に違うものを見つけたんだ。柚木は何も言わないし、俺は見て見ぬふりをして来た。
柚木は俺が好き......だとしても、やっぱり雅のことも好きなんだろう。いまだに雅について調べているのをよく見かける。
こいつはどうしたいのか......ただ、俺に告る気はないだろう。そうすれば、俺たちの関係は壊れてしまうから。
「もう飲むなよ」
「うぅ......成宮さん......」
「するか?」
「ん......したい」
気づいた時点で、セックスするのは止めるべきだったとも思う。
俺たちは相変わらず、疲れや生理現象を理由に関係を持っていた。俺は、柚木を苦しめているとわかっていながら抱いてしまう。
何かを忘れたい時セックスに溺れる......それは今も昔も変わらない。雅もそうだった。今は......幸せなセックスだけをしているだろうか。
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