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(Side:雅)
「ゲホッ、ゲホッ......雅......すまないが、薬をくれないか」
父さんたちが来てから3日が経った。今日は特に咳が酷いし顔色も悪い。昨日、リビングに新しく買ったベッドを置いた。ソファーで横になるには窮屈だし、寝室は遠い。疲れたらすぐに横になれるように......と。
今朝は咳で目が覚め、朝から少し血を吐いていた。リビングのベッドで横になり訪問に来た医者に点滴を打ってもらってもまだ辛そうだった。
「一豊さん......」
「大丈夫......薬を飲んで、少し休めば......ゲホッ、ゲホッ」
薬を飲み込むことも辛そうで見ていられない。側で痛む場所を撫でて手を握ってあげることしかできない自分がもどかしかった。
「雅......今日、夕方にまた、人が来るから......」
「今日?そんなに体調悪いのに」
「明日になって良くなるものでもないからね......」
「でも」
「雅も良く知ってる奴だから......気を使うことはないさ」
「わかったから、喋らないで、休んで、お願い」
怖くて仕方がない。どんどん、死が近づいている。手を握って指先に口づける。一豊さんは優しい笑顔で俺の唇を擽った。
「まだ大丈夫......そんな顔しないで」
頭、頬、首筋。何度も撫でてくれる温かい手。
「キスしていい......?」
「したいと思っていたところだよ」
苦しくないように触れるだけ。かさかさした唇に、命を吹き込むように何度も重ねた。俺の命の半分をあげられたらいいのに。泣かないようにするので必死だった。
「可愛らしいキスだね......舌を出して?」
「ん......」
言われて少しだけ差し出すと、絡めるように一豊さんの舌が触れた。ちゅっと小さく吸われて、たったそれだけなのにゾクッとして舌を引っ込めてしまう。
「可愛いね......これだけで感じたの?」
「ん......だって」
「言っただろ、まだ大丈夫......もっと食べさせておくれ。雅の唇は甘くて美味しい極上のスウィーツだ」
掠れた声で、でも相変わらず一豊さんらしいキザな台詞に思わず頬が緩む。
本当ならもっと休ませてあげないといけないのに、何度もキスをねだってしまった。
「おいで......一緒にお昼寝でもしよう」
一緒になって布団に潜り込み、横になりながら庭を眺める。桜の蕾が膨らんでいる。
暖かくなったら庭でピクニック......それは、叶わないかもしれない。胸一杯に一豊さんの匂いを吸い込んで、それと一緒に涙も飲み込んだ。
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