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まさか自分が男に狙われることがあるなんて考えたこともなかった。なんだかどっと疲れた気がする。ダニエルはしゅんとした様子でもう俺には触れず、何度も謝ってからまた仕事でもしているのかパソコンに向かっている。
「......はぁ」
寝てしまおう。そう思うのに眠れなかった。思うことが多すぎて頭が休まらないのだろう。窓の外には果てしない闇が広がっている。どんどん、雅から離れていく。
「......眠れないのかい?」
他の客はほとんど寝入っている。ダニエルが小さな声で話しかけてきた。
「また泣いてる?」
言われてから、止まっていたはずの涙がまた流れていることに気づいた。
「酒でも頼むかい?」
「......いや」
「そう。......ねぇ、今ショーゴについて調べてたんだけど」
なんだ、まだ俺に絡んでくるのか、と一瞬身構えたが、どうやらそうではないようだ。見せられたパソコン画面には、ジョージとやっている企画についてのサイトが開かれていた。
「ショーゴ、きみってけっこう凄い男だったんだね」
「や、俺は別に......」
「ジョージとは面識があるよ。何度か広告を作るのに世話になったことがある。素晴らしいパフォーマーだし、良いアートディレクターだよね」
ほんとに、縁というのには驚かされる。まさかジョージとも繋がっていたとは。
「ここのウェブサイトにあるショーゴの作品を見させてもらったよ。なんだか、一言に緊縛と言っても色々あるんだなぁと思ったよ......上手く言えないけどね。ショーゴの縄には何か感状めいたものが見える。欲目なしに、素晴らしいと思うよ」
「さ、サンキュゥ......」
長い英語は頭が追いつかないが、なんとなく褒められたような気がする。
「ショーゴ、きみと仕事できないかな?」
「えっ、えぇっ?」
「シィー、静かに。これ以上怒られたら空に放り出されちゃうよ」
雅をモデルにと考えていたらしい広告の案を見せられた。ジュエリーの広告らしいが、ここに俺の縄を融合させてみたいらしい。......いや、よくよく考えてみればこれは凄い大仕事じゃないか?
「ダニエルさんは......」
「ダニー」
「だ......ダニーはほんとに、AURORAの社長、なんですよね......?」
「そうだよ?」
「あの、AURORAですよね?」
「北極で見れるやつじゃないよ?」
「わかってますよ......」
信じられない。からかわれているのだろうか。しかし目を見ればわかる。これはビジネスだ。
雅にもう一度会った時、もっと大きくなった自分でありたいと思う。もっと頼ってもらえるような男になりたい。駆け出しの緊縛師だった俺が、世界に通用するまでに成長した姿を雅に見てもらいたかった。そして、叶うなら雅を、また華やかな世界に連れ出してやりたい。
SM緊縛の世界ではなく、表舞台に。世界のAURORAで雅と俺の緊縛を見せられたらどれだけ素晴らしいことだろう。
「......よろしくお願いします。ぜひやらせてください」
「本当かい!嬉しいなあ」
「あ、良かったら来週末に今回の企画のレセプションパーティーがあるんですが、良かったら......」
「ここに書いてあるやつだね。行くよ。何がなんでも!緊縛ショーもあるって書いてるね」
今俺ができることは、緊縛の仕事を頑張ることだ。蓬莱さんに教えてもらった数々の縛りを、受け継いでいく。そして、雅の隣に立つのに恥ずかしくないだけの経験値をためるのだ。
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