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「ショーゴ......起きるんだ、ショーゴ!」
あるはずのない温もり、俺の名前を呼ぶ声。目を開けると俺を覗き込む色素の薄い瞳......。一瞬雅が帰ってきてくれたのかと錯覚してしまったが、よくよく見なくても目の前にいるのはダニエルだった。
「......ダニー......ごめん」
「ひどくうなされていたよ。ミヤビって呼びながら......」
「あぁ......うん」
俺が前向きになったところで、今雅は死に向かう蓬莱さんと共に自分の命をも止めてしまおうと考えているのだ。俺が雅の手を離したばかりに。
調度食事が運ばれてきた。食欲はなかったがとりあえず受け取ってコーヒーを飲んだ。ゆっくり頭が覚醒していく。
「ショーゴ......ミヤビは、特別な人だったんだね」
大きな手が、俺の頭を撫でた。蓬莱さんの手を思い出してまた悲しい気持ちになる。
「恋には二つあると思う。一つは、別れた後もまた別の誰かを好きになれる恋。もう一つは、永遠に縛り付けられる恋。ショーゴのは後者だね」
「......そうだよ。ダニーは、俺が不幸だと思う?」
「いいや。羨ましいよ。それだけ愛せる人がいるのはそれだけで幸せなことさ」
ダニエルの優しい笑顔に、俺も笑顔で返した。そう、俺は一度だって自分が不幸だと思ったことはない。辛いことはもちろんある。でも、雅と出会ってからの自分の人生を振り返ってみて、自分が不幸せだとは思えなかった。
「あー、でも悔しいなー、残念だなぁ。好みドストライクなんだけどなぁ。俺だって運命感じたんだけどなあぁ」
ねちっこいゆっくりした英語で言われても、俺は笑うしかできない。
「たとえ雅がいなくてもダニーは無理だって。勘弁して」
「チェッ」
舌打ちひとつ、突然顔が近づいてきたと思ったら、頬っぺたに唇がぶつかった。
「......!」
「オーゥ、キス、アメリカ、アイサツ。OK?」
「オーケー?じゃねぇよ......!」
「ハハハ」
ダニエルはいい人だと思う。落ち込んだ俺を何度も慰めてくれて。
......でも、隙あらばケツを触り手を握ってくるのだけは勘弁してほしい。
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