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「成宮さんっ」
「うぉっ......と。ただいま」
玄関を開けたら柚木が飛んで出てきたのを受け止めた。頼りになる年下の友人は、時々可愛い弟のようには思うけど、それまでだ。
「心配かけてごめん......あと、雅ちゃん連れてこれなくてごめん」
「それは......いや、とりあえずごはん食べましょう。チャーハンだけですけど」
「サンキュ」
暖かい部屋の中に入るとチャーハンの香ばしい匂いがした。雅の手料理はそれはそれは美味しいのだが、柚木の作る飯も、男飯って感じで旨い。
「いっただっきまーす」
そういや飛行機の中でほとんど食わずだったからめちゃくちゃ腹が減っててガツガツ食べた。
「おまえは?腹減ってねぇの?」
「あ、いや......」
「そういやさ、AURORAの社長と知り合いになってジュエリーの広告のオファーもらった」
「オーロラって......はぁ!?えっ、あのAURORAですか!?」
「北極のオーロラじゃないぜ?」
「わかってますよ!」
ダニエルと同じ返しをしてみたら、俺と同じ反応をした柚木を見て笑う。
「なんで......意味わかんないんですけど。日本に何しに行ったかわかってんですか?」
「その件は、たまたま帰りの飛行機で出会って、妙に気に入られちまってな......あ、もちろんカメラマンにはおまえを推しといたから」
「あ、はい......って、いや、雅さんは?雅さんはどうなったんですか」
雅のことを話すのは少し気が重い。しかし、柚木には報告しなければなるまい。俺はスプーンを置くと水を一口飲んで頭の中を整理した。
「雅は......蓬莱さんと結婚してた」
「はぁ!?」
「最後まで聞け。......蓬莱さんは、末期がんで......余命1ヶ月弱らしい。蓬莱さんの最後の願いが、雅と過ごすことだったんだ。雅は蓬莱の姓になってた。蓬莱さんの最期を看取るつもりでいるし......もちろん、蓬莱さんを愛してる。んで、龍弥とは、去年の春の時点で別れたらしい。......詳しくは聞かなかったけど」
あまりのことに柚木も言葉を失っていた。雅の性格を知っている柚木だから、たぶん蓬莱さんとのことは責められないだろう。
「......俺が悪いんだよ......雅は、龍弥との未来は見てなかった。昔から。龍弥にはちゃんと会社勤めして女と結婚して家族を得るっていう、普通の人生を送ることを願ってたから、いずれ別れることになるって言ってたんだ......。そうなっても俺には側にいてほしいって、いつもいつも言ってたんだよ。......龍弥だって急に雅を嫌いになって別れた訳じゃないと思う。二人の間に何があったのかはわからねぇけど......それでも、あの時俺は雅に何も言わずに離れることはしちゃいけなかったんだ。どんな形でも、雅の心に寄り添ってやらなきゃいけなかった。雅は......俺のこと嫌いだなんて一言も言わなかったんだからな」
「......だから、早く連絡しろって言ったじゃないですか......」
「ん......っとに、俺は馬鹿野郎だったよ」
「それで......それでまた一人にして放って帰ってきたんですか」
「......今は、もう蓬莱さんのものだ」
「でも、雅さんは成宮さんに嫌いだって言いましたか?もう愛してないって言いましたか?」
「......言ってない......けど、雅は......蓬莱さんの後を追って死のうとしてると思う」
「そんな......!止めてください!そんなのだめだ!」
「蓬莱さんだってそんなことさせないさ。蓬莱さんは言ったんだ、俺に......自分が死んだら、雅を頼むって。......今、俺が二人の間にいることはできない。それはまた雅を二心で苦しめさせてしまう。今だけは蓬莱さんだけを愛していたいんだと思う、から」
「そんな......」
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