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昼から夜まで眠ったままの一豊さんを見つめる。いつだって俺より後に寝て俺より先に起きていたのに、最近では寝顔ばかり見ている気がする。
食欲もない。ひたすら隣に寄り添って、頬を撫でたり手を撫でてみたり......
「一豊さん......桜が綺麗だよ......花吹雪でね......新芽も見えてきたよ」
暖かくなったら庭でピクニック......そんな細やかな願いも叶わなかった。
「隣で寝てもいい?」
返事はないけれど、温もりをもっと感じたくて。
時々、こうして一豊さんの隣で寝る。......寝ると言っても、眠るのが怖くてもう何日も寝ていないけれど。俺が寝ている間に逝ってしまったら......
絶対に一人では逝かせない。最後の最後まで側に。でも本当は、やっぱり一緒に死んでしまいたい。食べることも眠ることも止めれば、このまま緩かに共に逝けるんじゃないだろうか。
今の俺には目の前にいる一豊さんだけが全てだった。彰吾や龍弥を思い出しても......それでも、一豊さんといたいと思う。だって、思い出すのは一豊さんとの思いでばかり。初めて出会った時から、結婚して今までのこと。
「ねぇ一豊さん......俺の我が儘ならなんでも聞いてくれるんでしょ......?」
一人で勝手に唇を重ねて乞い願う。
「一豊さんの心臓が止まった時に、俺の心臓も止まるような機械をちょうだい......ね......それが最後のわがままだから......」
「......み......や、び......」
一豊さんの唇が微かに震えて俺の名を呼んだ。慌てて唇を離すと、薄く目を開けて俺を見た。目が合う。俺が見えてる。俺を見てくれてる。笑わなきゃ。そう思うのに、また泣くことしかできなかった。
「ばかなこと......言うんじゃないよ......」
「やだ......」
「いい子だから......雅」
「やだ......っ」
俺の涙を拭ってくれる優しい手。この手を離したくない。永遠に愛されていたい。
「死んじゃやだ......死ぬなら連れていって......連れていってよぉ......っ」
死んじゃやだ、死なないで......一豊さんのあまりにも小さくなった身体にしがみついて叫んだ。
「一人にしないで......」
「みやび......あいしているよ......」
「愛してる、愛してる、愛してる......っ」
一豊さんの胸に顔を埋めた。生きて。生きて愛し合いたい。一豊さんの胸がぐしょぐしょに濡れるまで泣いた。泣いても泣いても止まらなくて、でも、とくんとくんと聴こえる音と優しく髪を撫でてくれる手に力が抜けていった。
静かすぎる夜、俺は一豊さんの鼓動と温もりだけを感じて少しだけ眠った。
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