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(Side:彰吾)
真夜中という時間に電話が鳴った。俺と柚木は仕事の帰りでタクシーの中にいた。嫌な予感しかしない。柚木と顔を見合せ画面を見ると、東雲さんの文字にほとんどを察した。
「もしもし......」
『おつかれ。蓬莱さんが危篤だ』
東雲さんから発された端的な言葉。頭を鈍器で殴られたような感覚がした。まだ最後に会った時から2週間ほどしか経っていない。現実を受け止めきれない俺に対して、柚木はぐっと歯を食い縛り運転手に何かを告げた。
『俺はこれから向かうが......おまえも来れるなら......』
東雲さんの声がどこか遠くに聞こえる。その時、ガシッと横から肩を掴まれた。
「なにぼさっとしてるんですか!今から空港向かいますよ!しっかりしてください、師匠さんでしょ!最後を看取ってあげてください!それに......雅さんを一人にしちゃだめです、雅さんには、成宮さんが必要なんですから......っ」
目に涙を溜めながらそう言う柚木を、俺は無意識的に抱き寄せていた。
「......サンキュ。ちょっと間一人で頑張れよ」
「わかってますよ。俺単独の仕事だっていっぱい来てんですからね......」
「おう。絶対帰ってくるから、こっちに。......雅も連れて」
「......そうしてください。遅くなりそうなら言ってください。仕事は、俺がなんとかしますから」
「おまえはほんとに頼れるやつだよ」
「最高の相棒でしょ」
泣き笑いのような柚木と、拳と拳をこつんとぶつけ合う。そうして、アパートに向かっていたタクシーは空港にたどり着いた。俺が買い間違えたらいけないからと、わざわざ柚木がカウンターまでついてきてくれた。いつ何があるかわからないからパスポートを持ち歩いておけと言ったのも柚木だ。本当に、こいつには頭が上がらない。
「一番早く着くのが成田経由になりました。到着予定は朝の8時......なんで、間に合うか、わかんないんですけど......」
「了解。ありがとな。......じゃ、ちょっと行ってくるわ」
「......はい。気をつけて」
日本に行くにはあまりにも身軽すぎる格好のまま、柚木を残し俺はニューヨークを飛び立った。
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