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(Side:雅)
「......どうして、二人きりでいさせてくれないの?」
俺の口から出る言葉は、誰にも聞いてもらえず空気の中に消えていく。
「父さんを呼んだのも、芹沢さんと......彰吾まで......俺だけじゃ足りなかったの?」
硬く冷たい唇に何度もキスをする。
死装束を纏った一豊さんは、一豊さんじゃないみたいだ。俺の知ってる一豊さんは、もっとエレガントで、気品があって、格好いい。......それでも。
「一豊さん......一豊さん」
どれだけ体を抱きしめても、寒くて寒くて仕方がない。優しく撫でてくれる手はもう動かず、キザな言葉で甘く愛してくれた唇も閉ざされたまま。
「一豊さん......俺をどうしたいの......?」
一豊さんだけを愛してる。そう何度も自分に言い聞かせてみるのに、心の中で小さく灯るあたたかい光。
『雅ちゃん......』
彰吾にそう呼ばれる度に胸が締め付けられる。今すぐ触れたくなってしまう。きっと、彰吾の手は温かくて、胸に耳を当てれば心地よいリズムを刻んでいるのだろう。
「一豊さん......助けて」
彰吾を求めてしまうこの心を殺して。共に逝かせてくれないのなら、どうか一豊さんだけを想っていられるうちにこの心だけでも連れていって。
「一豊さんのことも、幸せにしてあげられなかったね......」
そうしてくれなかったのは、俺の心にいつまでも彰吾と龍弥の影があったことを一豊さんは許してなかったからだろうか。......きっとそう。
「一豊さん......ごめんね、ごめんなさい......」
懺悔の言葉ももう届かない。
俺は、愛されるばかりで誰も幸せにできない。
この心が憎い。何人も好きになる。そして、大切な人を傷つける。
もう誰も好きにならない。もう誰も求めない。今度こそ一人で生きていく。
「一豊さん、一豊さん......」
ただ、あと少しだけ。
もう少しだけ、一豊さんの胸で泣いていたかった。
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