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はだかの王子様23
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執事は暗闇の中で目を覚ました。
「この香り、懐かしいのでは?」
冷たい床から身体を起こす。
支えた腕にぬるりとした感覚がする。
「っ!ライル様っ‼︎」
それが血液だということに気づき、執事は最愛の王子を探した。
「っ、」
「あなたでも痛みますか、やはり。」
その血液は王子のものではなく、執事は痛む腹部を押さえた。
「しかし、これだけ出血していながらまだ意識を手放さないとは、切り裂きジャックの異名を持った殺人鬼は違いますね」
「…私の過去を調べましたか。仕事が早いようで、さそがしあなたの王子様は喜ばれたのでしょうね」
執事の言葉に、暗闇から金髪碧眼の執事が姿を表した。
「あなたの愛しい王子様が幸せな限り、彼の方は満足しては下さらないのです。ですから、」
碧眼の執事は胸ポケットからナイフを取り出した。
「ライル様が一番悲しまれる方法をと思いまして」
血まみれの執事の胸元にある白銀のバッジを取ると、執事の首にナイフを押し当てた。
「あなたが死んだと思ったら、ライル様はどうなさるのでしょうね。魔法使いなどではなかったと失望するでしょうか?絶望の果てに自ら命を絶たれるかも。とにかく私の王子様が喜んでくだされば私は構わないのです。」
「…昔、言われたことがある。ある女性に。彼女は、切り裂きジャックだった俺を執事に殺せと命じることができたのにしなかった。何故だと思う?」
大量の血液を失った執事は、意識が薄れゆく中で思い出していた。
「…その執事が心を奪われるからだ、と。笑えるだろう?執事はどんな命令にだって従うのに。その執事の心を心配するなんて。…だが、思ったんだ。心から信じ守ってきた主からそんな命令をされたら、執事は自分の心を殺さざるを得ないんじゃないかと。」
「…なにが言いたい?」
「…俺は、お前が可哀想で仕方がない…」
「っ!」
そう言った執事は遂に意識を手放してしまった。
「ではあなたは幸せだと言うのですか、幼い無知な王子の執事になったことで、命を落とすことになっても」
碧眼の執事の呟きは、誰にも届かない。
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