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執事。エドワードの誕生
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「今日からここがあなたの家よ」
変わり者の王女に連れて来られたのは、国外れにある森の奥
人目につかないようにひっそりと建てられた大きな城が一つ
捨てかけた命を拾ったのは一捻りで殺せそうな少女だった。
小さな体から出る強い意志に、興味が湧いた。
どうせ捨てるならと、気まぐれで預けてみることにした。
連続殺人鬼という過去、組織からの追手、恨み、
様々なしがらみから離れ、自分の心が変われると言った王女に。
「ここでのルールはただ一つ。人を殺さないこと。簡単でしょ?」
入り口で王女が笑う。
「殺さない程度に痛めつけるのはいいのか?」
「やだなにその選択肢!ダメよ、いいわけないじゃない!もう!仕方ない、あなたには特別に別ルールね!人に喧嘩を売らない、売られても買わない!いい⁈」
怒る王女の隣で大柄な執事が静かに笑う。
「アリア様が帰られたぞっ!」
門番が嬉しそうに叫ぶ。
黒く大きな城門が低い音を立てて開くと、中から大勢の人間が出てきた。
「アリア様!」
「お帰りなさいっ」
「ご無事でっ」
「みんなただいまー」
様々な人種の人間が王女を取り囲む。
見ると血の気の多そうな者も多く、だが皆穏やかな顔をしていた。
「アリア様そいつは?」
1人が男の存在に気づき声をかける。
「今日からここで暮らすの。名前は、エドワード・ジャック・フラー。みんなよろしくね」
「フラー⁉︎ってことはフラーさんから指導してもらうのかっ⁈すげぇなお前!」
「…今初めて聞いたぞ」
「あら?言ってなかったかしら。だってあなた強いんだもの。フラーさんじゃないと手に負えないわ」
「…名前も」
「エドワードはね、幸福、守り手、という意味があるの。あなたが幸福で、あなたがこれから出会うかもしれない守るべき人も幸福にできるように。いい名前でしょ?」
王女の自信満々な笑顔に男はため息をついた。
執事に案内された部屋に行くと同じ寝床の面々が男の周りに集まる。
「俺はニコライ、アリア様には命を救われた。俺の生まれた国はもうない。滅ぼされてな。途方に暮れていた俺を見つけてくださったのがアリア様だ。」
灰色の瞳が鋭い、長身の男が笑う。
「俺はユーフォリアだ!医者を目指していたが迫害を受けて国を追われた。アリア様はそんな時に俺を助けてくださって、医者になることができた!」
こちらも大柄な体がたくましい赤茶色の短髪をした男が口の端を上げる。
「僕たちはフェルム兄弟。僕が弟のバルで、コッチの涙ボクロがあるほうが兄貴のアル。よろしくね」
瓜二つの顔だが、笑顔の弟に比べ兄は無表情で無口だ。
「今日から俺たちがお前を一人前の執事にする為特訓する!フラーさんが着いてくださるということはなかなかのツワモノだということだろうが、俺たちも負けてはいない!辛すぎて逃げ出すなよ!」
赤茶色の短髪の男が黙って聞いていた男の背を叩く。
「…。」
「…エドワード、挨拶を」
大柄な執事に促され男は無愛想につぶやいた。
「…よろしく」
この日エドワードは執事としての第一歩を踏み出した。
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