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はだかの王子様30
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薄暗い部屋の中に置かれた一体のミイラ。
美しいガラスの棺に入れられ横たわっている。
「ニコライ、この子は僕の弟。ライルだよ。知っているよね?あなたが大好きだったアリアの子供だよ。大きくなったでしょう?」
ファイム王子が棺に歩み微笑む。
愛おしそうにガラス越しにミイラの頬を撫でる。
その異様な光景にライル王子は言葉を失った。
「…ライル、紹介するよ。この人は、僕が唯一愛した人。僕らの話を聞かせてあげる。」
そう言ってファイム王子は棺のガラスに頬を寄せて目を閉じた。
「僕らが出会ったのは、君が生まれる一年前…」
「ファイム様!」
「ニコライどうしたの?」
血相を変えてやって来る灰色の瞳をした逞しい男に美しい顔をした王子が穏やかに微笑んだ。
「また勝手に城を抜け出されて!こんなところで」
「大丈夫だよ。ニコライが僕を守ってくれるから」
「そんなに私のことを過信されては困ります!私はファイム様の執事にさせていただいてまだ1ヶ月しか経っていないのですよ!」
ニコライが心配そうにファイムの体を確認する。
穏やかな日差しが暖かい森の奥の開けたところに、ファイムは1人寝転んでいた。
「アリアが紹介してくれたんだ。間違いないでしょ?」
「それは!…もちろんですが…」
「ふふっ。ちょっとくらい許してよ。国務のこととかいろいろ覚えないといけないことが多いし、大臣たちは怖いし、疲れちゃうんだ」
ニコライは諦めたように微笑むと、ファイムの隣に寝転んだ。
「お察しします。アリア様もよく城を抜け出しては我々のところに遊びに来られておりました。」
「アリアはあんなにいい子なのに、お妃様やお母様たちは意地悪ばかりするね…」
ファイムの言葉にニコライは表情を曇らせた。
「…僕は、彼女がうらやましい。たくさん辛いことがあっても、それを乗り越える力がある。支えてくれる愛する人や仲間がいる。僕には、何一つない」
「ファイム様には、私がおります。」
「え、?」
「あなたは私がアリア様の命令で仕えてるとお思いでしょうが、それは違いますよ」
ニコライは体を横にすると、風に揺れるファイムの細い髪を眺めた。
「私はあなたの執事になるために訓練し、アリア様にお願いして執事に推薦していただいたのです。」
「そんな、だって僕は何も」
ファイムは体を起こすと顔を真っ赤に赤くした。
「アリア様からあなたのお話を伺っておりました。顔も知らないあなたに、私はアリア様の話を聞いて、勝手にこのようなお方にお仕えしたいと思うようになり、」
「でも、僕はっ」
「あなた様はまだ気付かれていないのです。ご自分の魅力に。」
微笑むニコライに、ファイムは恥ずかしそうに顔を背けた。
「…僕は、恋をしていた。僕のそばに居て、僕を支えてくれて、理解してくれるただ1人の人に。」
ファイム王子の言葉に、ライル王子は優しい執事の笑顔を思った。
「だけど、それは許されなかった。僕には決められた未来があって婚約者がいたから。君が生まれる前、僕は第一王子でもありお父様の一番のお気に入りだった。国王になることを約束されていた。だから、アリアが身ごもったと聞いて嬉しかったんだ。お父様の愛するアリアが子供を産めば、その子供が一番のお気に入りになる。その子供が国王になるって。」
棺から体を離したファイム王子がライル王子に歩み寄る。
「…だけど、そんな僕の想いを知ったアリアは、お父様に言ったんだ。子供を国王にはさせないって。そして、僕の愛する人からも引き離した。」
「…どういうこと?」
「ニコライをアリアの執事にしたんだ。フラーを僕につけると言って。アリアに命を救われたニコライは断れなかった。」
「っ、」
「お前の母親は、優しい顔をして近づいて僕を追い詰めたんだ。お父様のお気に入りだった僕を妬んで。傷ついた僕をあざ笑うかのように婚約者との急な婚礼が決まった。そのセレモニーの差中にニコライは死んだ。…僕の婚約者を庇って。」
「…それは事実とは異なります。ファイム様」
「っ⁉︎」
声がしたのは誰もいないはずの部屋の中
聞き覚えのある声にライル王子は振り返った。
「っ!エドワードさんっ」
そこにはあの優しい笑顔で立つライル王子の執事がいた。
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