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はだかの王子様33
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「…これが、我々の知る真実全てでございます。」
ファイム王子は、その場に座り込んでいた。
「…誰もが、お兄様の為に、お兄様を悲しませない為に」
ライルはその小さくなった背にそっと触れる。
ファイム王子は声を殺して泣いていた。
「っ、ぼくは、何も知らずにアリアを恨み、ライルを、憎んでた…っ、ぼくは、ぼくはっ」
「ファイム様!っ…」
叫んだファイム王子が落としたナイフを拾い自分の喉元に向ける。
「っ…」
床にポタポタと赤い血が滴る音がする。
「っ、ライル…⁉︎」
「ライル様‼︎」
ナイフで手のひらが傷つくのも構わずライルはファイム王子を止めていた。
「っ、ダメです。お兄様が死んでは、お兄様を守ろうとした人達が悲しむっ…お兄様の幸せの為に命を落としたニコライさんやアメリア様が、…それに、お母様が!今のお兄様を見たらきっとっ!」
震える2人の手から、エドワードがナイフを取る。
「っ…なんで、ぼくなんかを助けるっ!ぼくは、ひどいことをっ」
「…僕のお兄様だからですっ、今までも、これからもずっと、お母様が願ったように、皆さんが思ったように、ぼくは、お兄様の幸せを願いたいっ、愛することに理由なんていらないっ!」
「ライル様…」
「っ、ぼくがいますっ…エドワードさんも、フラーさんもっ、お父様もっ…それにっ、」
「ファイム様っ‼︎」
扉が勢い良く開き、入ってきたのは血相を変えたファイム王子の執事、ユリールだった。
「ファイム様っ、お怪我は」
「…ユリール、」
「お兄様には、ユリールさんがいるじゃないですか。お兄様の幸せを願う人が、」
ユリールはファイム王子の身体を強く抱きしめた。
「ファイム様は、私の命の恩人でございます!死にかけていた私を救って下さった、その方が喜ばれるなら、私は何だってする!それが例え、自分の心を殺すことだったとしても、私は、…私の心は、ファイム様に救われたあの日から、ファイム様の為だけにあるのです!」
「っ、ユリール、ぼくは、お前に酷いことしかしてこなかったのにっ…」
「…私を拾って下さったあの時のあなたは、とても温かく優しかった。そのあなたが、人を憎むなどよほどのことだと、その憎しみからあなたが解放されるなら、私はどんなことでもして差し上げたいと思ったのです」
「…ファイム様、これは執事としてではなく、アリアとニコライの友人としてお願いしたい。どうか、彼らが守りたかったあの頃のあなた様でいてください。ニコライが愛したあなたで」
「っ…」
エドワードの言葉に、ファイム王子は棺に入ったニコライの亡骸を見つめた。
「ニコライ、ぼくは、幸せになっていいの?アリア、アメリア、ぼくは、」
「それが、みんなの願いです」
ライルはファイム王子に微笑むと、そのまま意識を手放した。
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