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はだかの王子様36
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ホープ城での一件から数日後ー
「本来ならばもっと早くあなた様のお側でお使えし、お守りすることが我々の使命でしたのに、このような形で過去を明かし、ライル様にお怪我までさせてしまい、本当に申し訳ございませんでした」
長かった白ひげを切り、杖を持たずに立ったフラーは、深々と頭を下げた。
ベッドに座るエドワードも一緒に頭を下げる。
深手を負ったエドワードの部屋には、男たちが集まっていた。
「そ、そんな!僕は本当に幸せ者です!みなさんにたくさんたくさん助けて頂いて」
「助けて頂いたのは我らの方です!お母様のアリア様とあなた様には、返しきれないほどのご恩があります!」
フラーの横にいたガンジが目に涙を浮かべて拳を握りしめる。
「ライル、僕もだよ。こんな僕を許してくれて、助けてくれて、大切な人の存在に気づかせてくれて、本当にありがとう」
「っ、お兄様…ユリールさん…」
椅子に座って微笑むファイム王子の横で、ユリールも頭を下げる。
「俺たち以外にも、アリア様、ライル様に助けていただいた者達がたくさんいるんですよ」
「っ!静かに」
微笑んでいたフラー達の表情が変わる。
エドワードはベッドから出てライル王子を、ユリールはファイム王子を背に庇い、フラー、ガンジ、ユーフォリアは4人を庇うように部屋の入り口に向かって立った。
「…邪魔してすまない」
影から出てきた男に皆身構えたが、その顔に誰もが驚いた。
「「お父様?!」」
「「国王様?!」」
そこにいたのは、変装はしているがまぎれもなく、この国を治める国王、アーヴィン王だった。
「久方ぶりだな、フラー。元気そうでよかった」
「国王様こそ、お元気そうで」
椅子に腰掛けたアーヴィン王は部屋に集まった男達の顔を見渡した。
「アリアが亡き今でも、こうして集まってくれるとは、」
「…ご存知でしたか、我々の存在を」
ユーフォリアが笑いながら赤毛の頭をかく。
「アリアが時折、天に向かって楽しそうに話していたり、幼いライルを連れて何処かへ出かける姿を見たことがあった。アリアのことだから浮気ではないとは思っていたが、」
そう言ってアーヴィン王は苦笑いをした。
「まさかこんな精鋭ぞろいの者たちを連れていたとは。フラーも上手く丸め込んだようだな」
「申し訳ありません」
頭を下げるフラーにアーヴィン王は楽しそうに笑った。
「でも、お父様、どうしてここに」
ライル王子が尋ねる。
「…うむ、エドワードが挨拶に来た日、久々にフラーという名を聞いた。まさかとは思ったが、アリアがエドワードに遺言を託したと聞いて分かったのだ。フラーが帰って来たのだと。あれは、嘘だろう?エドワード。」
「…申し訳ございません国王様。あなた様がどのような反応をなさるのか試すようなことを、」
「いや、良い。エレオノーラの手前気づかぬふりをしたが、アリアは遺言を残すような性格ではなかった。だから、フラーからのサインだとわかった」
国王の言葉にフラーが申し訳なさそうに眉を潜めた。
「…あのような形でお側をお離れした身、再び国王様の前に現れるなど本来ならばすべきでないのは重々承知しております。ですが、今は」
「あぁ、分かっている。ついに動き出したな…。エレオノーラのことだ、フラーの名に気づかないわけがない。何らかの手を打ってくるはずだ。ファイム、少し話をしてもいいか?」
「…はい」
それまで俯いていたファイム王子が顔を上げる。
国王のただならぬ様子にライル王子が心配そうに見つめる。
「…10年前、私はお前に王位を渡そうとしていた。それが一番相応しいと思ったからだ。だが、」
「お、とうさまっ、お兄様は」
堪らずライル王子が声を上げると、国王は優しく微笑み頷いた。
「…だが、お前は大切な人をなくしてしまった。2人も。」
「っ!」
「しっかり者のお前が、意味もなく王位継承を断るはずがないと思ってな。アメリアの召使いに話を聞いた。彼女が自ら命を絶ったこと、ニコライという執事が関係していたこと、それを聞いて思った。お前がどれほど苦しく寂しかったか。」
国王はファイム王子に歩み寄り、優しく頭を撫でた。
「っ…」
「すまなかったなぁ、そばに居て支えてやれず。あの頃の私は、愛する息子のために声を掛けることさえ出来ないダメな父親だった」
「っ、お父様っ…」
「時期国王はお前だ。明日国民に発表する。今のお前なら大丈夫。心の支えとなる者を見つけたようだ、…ユリール、ファイムを頼む」
国王がファイム王子のそばに立つユリールを見つめる。
「っ、はい!」
ユリールの返事に、国王は満足げに微笑んだ。
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