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白い部屋、俺は知らない大人と向き合って座った。
大人は三人、それに対して俺は一人。
3人とも優しそうに笑っている。
「質問に答えてね。」
「はい。」
真ん中の人がそう言うと左右の人はなにか紙に文字を書き始めた。
「君の名前は?」
「ユキ。」
「苗字や、文字はわかる?」
「ユキしか覚えてません。」
「うん。年齢は?」
「わかりません。」
「お父さんやお母さんのことは覚えてるかな。」
「わかりません。」
「ここに来る前のこと、何かわかる?」
「わかりません。」
「一番古い思い出は何かな。」
「……病院で、寝てました。」
「わかった、ありがとう。」
自分に関すること、家族に関すること。
俺には全ての記憶がなかった。
でも物の名前や日常生活で必要な知識なんかは全部あった。
病院で"記憶障害"があると言われてその意味を理解することだって出来た。
「ユキくん。こんな風に言われてすぐに理解することは出来ないと思うけど…君は7歳。名前は白井ユキって言うんだよ。」
「はい。」
「これから記憶が曖昧なせいで大変なことがあると思うけど、大丈夫。皆がいるからね。」
「…はい。」
「なにか、聞きたいことなんかない?」
記憶が無い人に聞きたいことはないか、と聞いても何を聞くべきなのかもわからない。
別に自分がどこの誰かなんて知ったところで前と同じ生活を出来るわけじゃないし。
でも、一つだけ客観的に見てどうかと知りたい事がある。
「あの。俺は、子供っぽくありませんか?」
自分で今、ここにいて思う違和感があるんだ。
何か 気持ち悪いと。
「…ユキくんは大人っぽくてしっかりしてるね。」
そう言って笑う大人に俺はただ嫌悪感だけを感じていた。
***
「探偵さんは記憶がなかったんですか…?」
「うん。君と同じだね。」
「どうして?」
「さぁ、どうしてだろう。それはもう少し先でわかるよ。」
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