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『次ぎは県庁前ーお降りの方ございませんかー』
いつもの学校帰り。
いつものバス。
いつもの運転手。
いつもの…声。
「……」
恥ずかしながら俺は、この運転手さんの声のファンなのだ。
聞いてるとすごく落ち着くと言うか、とにかく好きな声で…
「ふぁぁ……」
眠くなって来た。
揺れるバスと耳に心地いい声も相俟って、いつも決まってこの辺りのバス停でウトウトと眠ってしまう。
都合のいい事に、俺が降りるバス停は終点だから万一眠ってしまっても乗り過ごす事も無い。
俺は心地よさに身を任せ、瞳を閉じた。
「…きゃく…お客さん…終点ですよ」
ふと、いつもマイク越しに聞いている声が凄く近くで聞こえて来て、ポンポンと肩を叩かれた。
俺はビクリと身を震わせ、恐る恐る視線を上げると、あの運転手さんが苦笑しながら立っていた。
「へ?…あ、すいません⁉︎」
俺は慌てて立ち上がると運転手さんに頭を下げた。
しまった!眠ったとしてもいつもだいたい2個ぐらい前のバス停で目が覚めるから安心してたのに…
よく考えたら終点まで眠っちゃったの初めてだ。
「いえ、こちらこそごめんね。せっかく気持ち良さそうに寝てる所起こしちゃって」
あ…運転手さん帽子取ってる。それによく見ると、こんな顔してたんだ。
声と同じで凄く優しそうだな…
ってなにドキドキしてんだよ俺⁉︎
「あの…お疲れ様です!」
俺は心臓の音をかき消す様に慌てて出口まで向かうと、小銭を勢いよくボックスに入れて階段をかけ降りた。
「お気をつけてー…ははっ、高校生は元気だねー」
「はぁ…はぁ…ただいまー」
恥ずかしいのと嬉しいので、あの勢いのまま走って帰って来てしまった。
息を整えながら玄関で靴を脱いでいると、姉貴がリビングから顔を出した。
「お帰りー…で?アンタ、頼んでたCDは?」
あぁ…CDね…CD…ってあれ?
「……あ……あ……あああぁあぁ!!!!」
家中…いや、町内中に俺の雄叫びが響き渡った。
「…バスん中…忘れて来た」
一瞬で全身の血の気が引いて青ざめて行く。
俺だってそのCDが普通のアーティストのCDだったらこんなにも取り乱したりしない。問題はその内容だ。
「アンタ私がどれだけ将×拓巳のドラマCD楽しみにしてたか分かってんの!」
コレだ…
「うるせー!てか、弟にBLCD取りに行かせんじゃねー!予約票見た段階で怪しいと思ったんだよ。何だよ『薔薇の誘惑』って。店員に「こちらで間違いございませんか?(ニコリ)」って、裸の男が絡んでるイラストのジャケット見せられて、無茶苦茶恥ずかしかったんだからな!!」
はぁはぁ…一息で言ってやったぜクソ姉貴。
「あんたも腐男子の端くれならば、そのぐらい羞恥プレイと思いなさい。で?どうすんのよCD?」
どうするって…明日運転手さんに聞くしか…
忘れ物だから、当然中身はチェックするよな…あんな物が俺の忘れ物だなんて知られたら、俺…恥ずかし過ぎてもう二度とあの人のバスには乗れない…
「忘れて来た分のお金は俺が出すから…同じやつ…自分で買って来て」
俺はフラフラと魂が抜けた様な足取りで、自分の部屋へと、とじ込もった…
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