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あれから一週間。
土日祝日学校休みで、バスに乗らない日とか、多賀さん以外の運転手さんに当たったりとか、多賀さんが多分休みだったりとかで、今週は1回ぐらいしか多賀さんの運転するバスに乗れなかった。
今日は会えるかな?てか俺、何待ちわびてんだよ…
俺はバス停に立ち、バスを待ちながらそんな事を考えていた。
しばらくすると、遠くからバスが向かって来てバス停にバスが止まり、扉が開く…
『お待たせしました。北原経由桜町行です』
あ…多賀さんの声だ。
俺がバスに乗り込みいつもの場所へ腰を下ろすと運転席のミラー越しに目があった気がして、小さく会釈した。
バスに揺られてしばらくすると、いつもの睡魔が襲って来た。
「ふぁあ…」
やっぱり多賀さんの運転って落ち着く。
声は勿論なんだけど、運転グセって言うのかな?揺れる感じとか、そういうのひっくるめて乗ってると凄く安心する。
俺は、あの日終点まで眠ってしまった事が気になって、眠っては起き、また眠っては起きを繰り返していた。
ーガクンー
「ん……」
やばい、また眠ってた。終点前にはちゃんと起きてる様にしなきゃ…
そう思いながら、ふと回りの席を見ると、俺以外の乗客はみんな降りてしまっていて、バスの中には俺と多賀さんだけになっていた。
思わずミラー越しに多賀さんの様子を窺うと、チラリと一瞬目が合って…多賀さんはすぐに真っ直ぐ前を見た。
あれ?もしかして俺の事見てた?
『晴紀くんだったよねー…終点着いたら起こしてあげるから寝てていいよ』
バス内用のスピーカーから、少し笑いを含んだマイクを通した声で、そう言われた。
う…やっぱり寝たり起きたりしてるのバレてる。
「すいません…つい、気持ちよくて」
『そう言って貰えると嬉しいよ。じゃあこのバス停からアナウンス止めるからゆっくりおやすみ』
「あの…止めなくていいです」
『どうして?どうせこの辺から乗る人居ないし、俺黙ってた方がゆっくり眠れるよ』
多賀さんは不思議そうにそう言った。
どうしてって言われても…確かに普通の人ならそうかもしれないけど、俺は多賀さんの声が…
「好きなんです」
『俺が?』
「ち…違います!!声が、です」
言っちゃった…多賀さんどう思ったかな?
『…ははは、そんな事初めて言われたよ、晴紀くん面白いね』
良かった。笑って流してくれて…
しばらく喋っていたら、あっと言う間にもう終点で…
「なんだかんだ喋ってたら終点着いちゃったね。ごめんね結局眠れなくて」
多賀さんはマイクを止めたそのままの声で苦笑しながらそう言った。
「いえ、そんな事」
俺も楽しかったし、一杯話せた事が嬉しかった。
「じゃあ、また今度。お疲れ様です」
そう言って階段を降りると…
「晴紀くん」
名前を呼ばれた。
「はい?」
振り返るとフワリと微笑まれ…
「俺も好きだよ…晴紀くんの寝顔…」
あ……
「じゃーまたね」
ーパタンー
多賀さんはそう言い残し、その場に呆然と立ちすくむ俺を残して去って行った。
「………///」
別に、俺の寝顔が好きだって言われただけなのに、まるで俺の事を好きだって言われたみたいで…
何でこんなに嬉しいんだろう。
これは…
恋?
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