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「……ちゃ………なー……なーちゃん!」
「……っん」
誰かに名前を呼ばれて浮上する意識。でも、"なーちゃん"って僕のことを呼ぶのは1人しかいない。パチパチと瞬きを数回し、視界がハッキリしてきた。小さな豆電球が付いてるのは僕のため、真っ暗だと夢と現実の区別がつかないから、ちょっとの明かりのおかげで僕は助かっている。
ぼっーと、天井にある豆電球を見つめていたら、誰かの手が僕の頬を挟んだ。
「なーちゃん、起きたか?。魘されてたぞ」
僕の顔を覗き込んできたのは、"みぃ"こと東雲湊さん。僕の大事な人。僕はこの人のおかげで、生きていられる。
「……み、ぃ」
「どうした?どこか痛いか?」
どこも痛くないから、首を横に振る。スルスルと彼の胸に顔を埋めれば、何も言わずに抱きしめてくれた。
温かい。優しい、僕の大好きな匂い。胸一杯に息を吸いこんだら、犬かよって笑われたけど、僕はこの匂いが大好きで何時でも嗅いでいたいんだ。
「こ、わい夢見た」
「ん。ここは俺となーちゃんの家だから安心しな」
「………真っ白で、お母さんがいて…」
「なーちゃん」
みぃの手が僕の顎を掴んで、優しく顔を挙げさせられる。目の前には僕なんかよりカッコよくて、綺麗なみぃの顔。コツンとお互いのおでこを当てて、
「大丈夫。なーちゃんは元気だし、あんな母親をこの家には上げない。なーちゃんは1人じゃない」
「……でもね、」
「でもねもねぇよ。例え入院しても、俺も付いていく。母親が来たら追い出してやる。……俺たちはずっと一緒」
細められた目を見ていられなくて、僕はもう1度みぃの胸に顔を埋める。ずっと一緒にいる、そう約束したのに、ずっと1人だった僕は、その約束に自信が持てない。いつかみぃが離れちゃうんじゃないか、いつかお母さんが目の前に現れるんじゃないか。怖くて怖くて、仕方ない。
1人に慣れてるくせに。
疫病神のくせに。
迷惑ばかりかけてるくせに。
欠陥ばかりのクセに、僕は我儘だ。
「みぃ、み、ぃ…っひっく」
「ん?俺はここにいるよ」
ぽんぽんと僕の頭を撫でる手は何処までも優しい。
だから、僕はその手に縋ってしまう。
「ず……とね、いっしょが…っん、い、い」
「あぁ。ずっと一緒にいような」
やっぱり僕は我儘だ。
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