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6、※陽太視点
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―――はあ、またやってしまった。
―――どうして、僕は優月の前だと素直になれないのだろうか。
小さな頃は、確かに優月が言うように、なついていた。それこそ、金魚の糞のように四六時中、優月の側にベッタリとくっついていた。
―――それは、まだ僕がΩだと判明する前だったから。
だから、かろうじて周りの奴等も許してくれて、僕らが仲良くしているのを心の中では快くは思ってはいなくとも、黙認してくれていたのだ―――と理解したのは僕がΩだという事実が判明した後の事だ。
《――――亀梨さん、どうか落ち着いて聞いて下さい。貴方は元はβでしたが、交通事故の影響で―――なんらかの異変が体の中で起きてしまい、βからΩへと変化してしまいました。しかも―――》
《これも非常に申し上げにくいのですが、今回の亀梨さんのケースの場合、完全にβからΩへと変化した訳ではなく―――半分はβで半分はΩという極めて異例なケースでして、誠に残念ながら完治の見込みは厳しいかと―――》
――ーふと、いつだったか淡々と医師に言われた冷酷な言葉が僕の脳裏をよぎる。
その日から、僕の華やかとは言えずとも楽しかった日常は180度真逆になり、地獄へと落とされたのだった。
―――僕を産んだ母や父親の態度も。
―――Ω以外の、学校の先生やクラスメイトの態度も。
―――小さな頃、僕が優月と遊ぶのを笑顔で受け入れてくれた優月の母親や父親の態度も。
全てが悪い方に変わってしまったのだ。
『―――でも、優月の僕に対する態度だけは変わらない。だから、本来なら有難うって―――言わなくちゃいけないのに―――』
学校から帰り、自室のベッドで横になっていた僕は壁に貼られたカレンダーをチラッと一瞥する。
『もうすぐ、修学旅行だ―――。この時が千載一遇のチャンスだ。いつもは言えない優月に対する感謝の気持ちを―――伝えなくちゃ。』
ーーーコンッ
ーーコンッ
すると、壁に貼られたカレンダーに目を奪われていた僕の耳に、ベランダの方から扉をノックする音が聞こえてくる。
―――僕の部屋に面してるベランダの扉を開ける人物なんて、優月しか考えられず、ドキドキしながらもベランダへと向かうのだった。
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